日本長期急性期病床(LTAC)研究会 第2回研究大会 開催報告
第2回研究大会を開催、200人超の関係者が熊本に集う
日本長期急性期病床研究会(会長=上西紀夫・公立昭和病院院長)の第2回研究大会が9月28日、医療連携の先進地として知られる熊本市内で開催され、200人を超える医療・介護関係者が集いました。大会長は、当研究会幹事で済生会熊本病院院長の副島秀久氏が務めました。
今大会のテーマは、「熊本から考える新たな地域医療連携のかたち」です。プログラムは午前の部と午後の部に分かれ、講演とシンポジウム、そして討論へと進みました。総合司会は、当研究会幹事で国際医療福祉大学大学院教授の武藤正樹氏が務めました。
午前の特別講演では、今回の社会保障制度改革や医療介護一括法の成立などに深く関わった厚生労働省の神田裕二・医薬食品局長が「地域包括ケア病棟と病床機能報告制度」と題して講演。
午後のシンポジウムでは、DPCの研究で知られる松田晋哉氏(産業医科大学医学部公衆衛生学教授)らが参加し、今後の医療介護体制の在り方などを議論しました。
■ 「病院見学会」を開催、役員らが連携の現状を視察
大会前日、当協会の役員らを中心とする「病院見学会」が開催されました。済生会熊本病院と平成とうや病院を視察し、現状や課題などをヒアリング。その後、熊本市内のホテルでイブニングセミナーと懇親会を開催し、交流を深めました。
「病院見学会」では、済生会熊本病院と平成とうや病院との関係を知るため、まず連携元である済生会熊本病院に集まり、担当者から説明を受けました。同院の診療体制やJCI取得に向けた取り組み、地域連携体制などについて同院医療連携部副部長の甲斐聖人氏が紹介した後、複数のグループに分かれて同院の外来がん治療センター棟を見学しました。
その後、連携先である平成とうや病院に移動。同院院長の森孝志氏が周辺環境や同院の取り組みなどを紹介した後、院内をラウンドしました。
■ 「事前指定書」(※)をテーマにイブニングセミナー
イブニングセミナーでは、済生会熊本病院から「事前指定書」をめぐる問題について発表がありました。
最初に、同院副院長兼医療連携部長の中尾浩一氏が「今なぜ、急性期病院で“事前指定書”なのか」と題して講演。心肺停止の原因や搬送元、転帰に関するデータなどを示した上で、「連携先病院でなぜ看取れないのか」と問題提起。「急性期病院が病状をしっかり説明していない」「看取るためのコンセンサス形成が困難」などの課題を挙げ、事前指定書の意義を語りました。
また、同院継続看護室看護師長の川上ゆり氏は、「事前指定書と地域連携」と題し、事前指定書を導入するまでの経緯や使用状況などを紹介しました。川上氏は今後の課題として、事前指定書に対する理解の普及・啓発を挙げたほか、急性期病院の役割にも言及。「家族間で自分の望む医療について語ることができるような機会の場を提供すること」「医療・福祉・行政が協働し、共有の場を持つこと」などの必要性を訴えました。
(※)事前指定書(主にレット・ミー・ディサイド)、事前指示書、患者の事前の意思表示書(日本医師会ガイドライン)、尊厳死宣言書、蘇生拒否の指示(DNAR)等、使用する団体・機関のこれまでの経緯により、様々な呼称があり、それぞれ形式も異なる。
■ 日本長期急性期病床(LTAC)研究会 第2回研究大会
日 時 | 2014年9月28日(日)9:30~16:15 |
場 所 | 済生会熊本病院 外来がん治療センター棟 4F コンベンションホール |
大会長 | 副島秀久(当研究会幹事、済生会熊本病院院長) |
テーマ | 「熊本から考える新たな地域医療連携のかたち」 |
主 催 | 日本長期急性期病床研究会 |
大会長 副島秀久氏
■大会プログラム
大会長講演
9:35~10:00
(座長)
武藤正樹氏(当研究会幹事、国際医療福祉大学大学院教授)
「日本型LTACを考える」
副島秀久氏(当研究会幹事、済生会熊本病院院長)
特別講演1
10:00~10:40
(座長)
小山秀夫氏(当研究会幹事、兵庫県立大学大学院教授)
「地域包括ケア病棟と病床機能報告制度」
神田裕二氏(厚生労働省 医薬食品局長)
指定講演
10:45~11:45
「大都市、地方都市、地域における医療連携の現状と課題」
(座長)
上西紀夫氏(当研究会会長、公立昭和病院院長)
「大都市の立場から」
絹川常郎氏(独立行政法人 地域医療機能推進機構 中京病院院長)
「地方都市岡山市(県南東部地区)の現状と未来
土井章弘氏(当研究会幹事、岡山旭東日院長)
「大都市、地方都市、地域における医療連携の現状と課題」
池端幸彦氏(当研究会副会長、医療法人池慶会池端病院 理事長・院長)
特別講演2
12:30~13:10
(座長)
小山信彌氏(当研究会幹事、東邦大学医学部医療政策・渉外部門特認教授)
「人口減少社会に向かう日本の医療福祉の現状と将来予測 特に熊本県に焦点をあてて」
高橋泰氏(当研究会幹事、国際医療福祉大学大学院教授)
シンポジウム
13:10~16:10
「熊本における医療需要予測と病床機能分化・連携」
(座長)
副島秀久氏(当研究会幹事、済生会熊本病院院長)
武久洋三氏(当研究会監事、日本慢性期医療協会会長)
「熊本における医療需要予測と病床機能分化・連携」
松田晋哉氏(産業医科大学医学部公衆衛生学教授)
「熊本県における医療提供体制の現状と地域医療構想」
岩谷典学氏(熊本県健康福祉部医監)
「診療報酬改定から今後の連携を考える」
赤星麻沙子氏(済生会熊本病院地域医療連携室長)
「急性期病院から患者を受け入れる立場から」
森孝志氏(平成とうや病院院長)
ディスカッション
(松田晋哉、岩谷典学、赤星麻沙子、森孝志)