日本長期急性期病床(LTAC)研究会 第2回研究大会 開催報告

《シンポジスト③》
熊本における医療需要予測と病床機能分化・連携
-診療報酬改定から今後の連携を考える-
赤星麻沙子(済生会熊本病院地域医療連携室長)

〇座長副島:
  現場サイドからお話を頂戴する。4月1日から地域包括ケア病棟が始まったが、現場としてはどのように動いているか。済生会熊本病院地域医療連携室室長の赤星さんに話していただく。

〇赤星:
  今回のシンポジウムのテーマは「熊本における医療需要予測と病床機能分化・連携」ということだが、今回の診療報酬改定で熊本の連携では大きな変化が見られたのでその話を中心に、「診療報酬改定から今後の連携を考える」という内容で話をする。
  本日の内容について、まず当院の概要を述べる。診療報酬改定の話を中心に進めるが、当院が新しく取り組んでいるアライアンス連携があって今回の改定に対応することができたと考えている。よって最初にアライアンス連携について少しふれたいと思う。そして本題である「平成26年度の診療報酬改定について対応と現状」、「今回の改定をどう捉えたかという」お話しをし、最後にまとめとして「今後の連携のあり方」とはということについて話したい。
  まず当院の概要を紹介する。当院は熊本市二次医療圏に属している。図の緑で示した病院が、当院と同規模の高度急性期病院で、こういった病院が熊本市医療圏に密集しているのが大きな特徴になる。オレンジで示した回復期や地域包括ケアを持つ急性期後の転院を受け入れる病院も充実しているのが大きな特徴。熊本市は、急性期病院の治療が終了した後、回復期や地域包括をもつ病院へ患者さんが転院していくという連携の流れができている地域である。
  当院は400床で、診療体制は脳、心臓、消化器、呼吸器など、重要臓器に絞った診療体制になっている。主な指標として、平均在院日数10.1日、病床利用率95.0%などがある。
  救急車の搬送実績は、DPCのデータでみると実績としては全国3位であり、たくさんの救急患者を受け入れている。多くの救急患者を受け入れているので、病床をいかに管理していくかが課題になるし、急性期後の治療をお願いする後方連携先をどのように確保していくかも重要な課題となる。
  病院概要についてまとめる。当院は限られた診療科しか開設しておらず、治療の急性期を担うのが役割である。医療の幅という意味でも時間軸においても限定された部分のみを担っているので、私たちの病院は自院を「専門急性期病院」と捉えている。当院だけでは患者さんに必要な医療を提供できないので、連携を大変重要視している。
  次に、2011年から当院が取り組み始めた新しい連携の形「アライアンス連携」について説明する。「アライアンス連携」はなじみのない言葉かもしれないが、まずはデータを用いて説明したい。
  2013年度、1万3455人の入院患者のうち28%にあたる3812人の患者さんが転院されている。患者さんは253施設に転院されているが、その半数は上位11病院に転院していることが分かる。
  当院が取り組むアライアンス連携は、地域で質の高い継続医療を提供するという連携の本来の目的を達成しようというものである。質の高い継続医療を提供するため、まずはこうした転院上位病院との連携を強化していくというのがアライアンスの考え方である。
  もう一つアライアンス連携における重要なコンセプトは、「患者のやりとりが連携ではなくそのストーリーに責任を持つ」ということである。スライドは平成とうや病院との連携会議での転帰報告の内容である。当院から転院した患者が平成とうや病院に入院した後、どのような転帰だったのかをデータとしてフィードバックしてもらっている。
  特に平成とうや病院から当院に再入院した患者さんについては、注意深くデータを見ている。病床確保のために無理な転院をさせていないかを省みるため、「転院の時期が適切であったか」、「患者の転帰が医学的に容認できるものだったか」を検証している。
  また平成とうや病院との連携会議にはいろいろな職種が集まり、連携上の課題について一緒に話をしている。これも「患者のストーリーに責任を持つ」という観点から、急性期後の治療やそこにおける課題を知る「仕組み」のひとつであり、このような「仕組み」をつくっているがアライアンス連携の特徴である。
  アライアンスの仕組みについては、転帰報告やケーススタディを行う連携会議だけではなく、連携先に当院の職員が赴いて技術教育をする診療技術支援や、転院先の先生方に回診に参加してもらう当院での共同診療などがある。これまでよりも一歩踏み込んだ仕組みを作ったことが深い信頼関係の構築につながっている。このようなアライアンス連携の背景があり、今回の診療報酬改定を迎えた。
  ここからは診療報酬改定の対応について述べたい。今回の診療報酬改定において、連携に関しては大きなトピックスが2つあった。一つ目は7対1入院基本料に新設された自宅など退院患者の要件である。7対1入院基本料を算定する病院の退院患者のうち直近6ヵ月の自宅などに退院した患者が75%以上であることという要件であるが、自宅などに含まれるのは、自宅だけでなく回復期リハビリテーション病棟、地域包括ケア病棟・病床、在宅復帰機能強化加算を届け出ている医療療養病棟など、転院先の病棟も自宅などにカウント可能なことが特徴となっている。
  この要件が示されてから当院では、2013年度の実績を把握した。2013年度の転帰は、自宅に帰った患者が70.9%の結果だった。当院から転院した際、転院先はどの算定病床で受け入れているかについてはデータがなかったので、転院上位病院にヒアリングをさせてもらった。
  結果は一般病棟入院料算定病院で受け入れを行っており、回復期などで直接受け入れている例はなかったので、当院は2013年度の実績では自宅など復帰率が、70.9%であり、要件を達成できていないことがわかった。
  一方、もう一つのトピックとして地域包括ケア病棟入院料の新設があった。こちらは自宅など復帰率にカウント可能な病床であり、重症度などの要件や、在宅療養支援病院や救急告示病院のどれかを取っていなければいけないこと、データ提出加算の届け出、リハビリは包括であること、在宅復帰率が70%以上であることなど、さまざまな要件が示され、連携先ではこの新しい入院料を届け出るべきかどうか、かなり検討されていたようだ。
  3月時点での当院、連携先の反応については、当院は復帰率を達成できておらず早急な対応が必要であった。転院先も「地域包括ケア病棟入院料を申請した方がいいのか」、「地域包括ケア・回復期での直接受け入れをしないと急性期病院からは紹介をしてもらえないのではないか」という危機感が募っていた。そのようなことから、今回の改定については地域として対応する必要があったといえる。これまでの診療報酬でも連携に関する評価はあったが、今回のように地域で対応しなければいけない改定は初めてだったのではないだろうか。
  改定への対応として当院では早速、3月12日に診療報酬改定に関する情報交換会を開催した。転院上位病院の病院事務長を対象に、今回の診療報酬改定の対応について意見交換を行った。「回復期リハや地域包括病棟などでの転院受け入れについて」、「地域包括ケア病棟の入院料の届け出について」などが主な議題となっている。
  会議の意見での抜粋である。今後の受け入れについては多くの病院が回復期や地域包括ケア病棟で直接転院を受け入れることについて検討中ということだった。地域包括ケア病棟の施設基準について、救急告示の申請が間に合うのかという意見や、データ提出加算の届け出に対する不安の声などが聞かれた。
  改定に直接関係はないが、当院が満床の場合、今日転院依頼をして、明日にでも受け入れてもらうような転院の依頼をすることがある。そのような場合、これまで転院先では一旦、一般病棟で受け入れるという形で早期の転院受入を行ってもらっていた。しかし、今後地域包括や回復期で直接受入となると、そのような早期の転院受入が可能かどうか分からないという意見もあった。この後もさまざまな情報交換を重ねながら改定への対応を行っている。
  在宅復帰率の実績である。2014年4月現在77.8%で、75%をわずかに上回る結果であったが、2014年8月は私たちが安全圏と考える80%を超える84.1%という実績になっている。
  在宅復帰率にカウントできる病床数ということで、2013年度転院上位病院である11病院中の8病院が地域包括ケア病棟を届け出済みという状況で、こちらの表で示すように、在宅復帰率にカウント可能な病床数が11病院の全病床数のうち、41.4%という結果になっている。在宅復帰率の要件を達成できた大きな要因としては、こうした転院上位病院を中心とした地域包括ケア病棟の迅速な届け出があったと思う。
  先ほどのスライドは、数字上在宅復帰率にカウント可能な病床がどれくらいあるかということであったが、こちらのデータは実際に4月から8月までに転院があった全病院のデータになる。4月までの累積では、在宅復帰率にカウント可能な病床への転院は23.2%になっている。7月までの累積で見ると、32.6%で実績も伸びている。地域包括ケアでの受け入れも7.5%ということで、7月、8月となるにつれて地域包括ケアでの受け入れが増えている。
  在宅復帰率のデータを累積で示す。在宅復帰率だけではなく、当院の方でも自宅や施設へ返す努力をするために自宅施設への割合のデータも見ている。転院先の受け入れ、当院の自宅退院の促進により要件の達成が可能になっているのが現在の状況である。
  次に今回の改定をどう捉えたかについて述べたい。アライアンス連携をベースとした連携医療機関との関係があり、今回の改定にスムーズに対応できたと考えている。
  ただ、当院のように診療科が限られており、転院の割合が高い急性期病院にとって、在宅復帰率の要件は厳しい内容であった。熊本以外の地域では、「地域の急性期病院が在宅復帰率の要件を達成できているので、回復期や地域包括で直接受け入れをしたことがない」とか「地域包括の届け出の必要性を感じたことがない」という話を聞く。しかし、今後機能分化を推進することが今回の改定ではっきりしめされているので、次回の改定では在宅復帰率の要件はさらに厳しくなるのではないかと考えられる。
  また、今回の改定では「基本在宅、ときどき入院」という言葉が聞かれたが、病院は治療の場であり治療が必要な患者に継続した医療を提供するために各病院が機能分化をする、機能分化が進んだからこそ連携が重要であることが国の方針として示されたのではないかと思う。
  今後ますます連携が重要になるということだが、今後の連携のあり方について最後に話をしたい。先ほど、「地域で改定に対応した」と話したが、今後の連携のあり方も地域で急性期後の患者をどう診るかについてしっかりした議論が必要だろう。その際に「地域をどのように定義するか」、「ポストアキュート、サブアキュート機能との連携をどう構築するか」、「連携を強化するためにどのように各病院の得意分野を明確化するか」を考える必要がある。
  まず「地域をどう定義するか」について述べる。紹介患者がどの地域から来ているかをマップに示した。当院が属する熊本市医療圏だけでなく、熊本市に隣接する宇城や上益城からも患者が来ている。
  一方、患者がどこへ戻っていくかについては、地域包括ケア病棟を例としてマッピングしている。星印がついているのが当院からの転院が多い地域包括ケア病棟をもつ病院である。こちらも熊本市を越えて転院しているのがわかる。これらのデータを見ても今後地域を考えるときに本当に二次医療圏で今後の医療体制や連携を考えていいのかを検討する必要があると考えている。
  次にポストアキュートとサブアキュート機能との連携をどう構築するかについてである。アライアンス連携において2つのタイプを想定しているが、それぞれの連携がサブアキュートとポストアキュートの連携の参考になるだろう。
  アライアンスには2つのタイプがある。「タイプA」は状態が安定した軽症患者、当院に入院が必要でない、または短期入院患者の連携をいう。こちらはサブアキュート機能との連携となり、例えば救急外来から直接転院を依頼するような連携を想定している。
  「タイプB」は急性期治療の終了後にも継続的にこれに準じる管理が必要な患者の連携で、ポストアキュート機能との連携となる。
  まずはサブアキュート機能との連携の例として救急外来から直接転院するケースのデータを示す。当院は診療科が限られているため、専門的治療で他の病院に転院を頼むケースもあるが、経過観察の目的で救急外来から直接転院するケースが2013年度の平均で月12.7件発生している。
  救命救急外来から直接転院になった患者の症状は、救急の方で2012年のデータを分析しているが、「ADL低下のため自宅への帰宅が難しい患者、安静目的の患者」が31%、「一過性の意識障害の患者」が20%という結果になっている。当院には救急患者が多く来院するが、救急で運ばれてくる患者が全て急性期病院での治療が必要というわけではないので、こうした救急患者を受け入れる連携の形があるということが、当院にとって大きな力となっている。
  サブアキュート機能との連携については、当院の心不全のデータを示す。循環器内科の心不全の入院患者推移数は、2008年13.8%、2013年15.3%と、循環器内科の入院患者に占める心不全の患者は13~15%という数になる。これを病床の占有率で見ると、2008年度は27.4%、2013年は33.9%ということで年々病床占有率が上がっているのが分かる。
  1年以内の再入院率は2008年15.4%から年々伸びて、2013年は30.2%になる。サブアキュート機能との連携という意味においてはこうした心不全の患者も転院先にお願いしていく必要がある。とにかく転院をお願いするということではなく、急性期病院からのフォローも必要になるので、アライアンス連携をベースとした仕組み作りが必要と考えている。
  連携を強化するために各病院の得意分野をどのように明確化するかについては、2013年の転院上位病院への主要疾患の転院状況を示す。データは転院病院についてそれぞれの疾患の受け入れ割合を示している。星印が地域包括ケア病棟の届け出済みまたは届け出予定の病院だが、アライアンス連携を進める中で、各病院の得意分野が段々と明確になってきた。今後急性期と回復期という機能分化だけではなく、回復期病院同士の機能分化も考える必要がある。そして、地域で患者をどう診ていくかを一緒に議論できればと考える。
  以上、今後の連携のあり方ということで話したが、最後に「連携とは」ということについてまとめる。連携の本来の目的である「地域で質の高い継続医療を提供すること」という部分は変わらないのではないかと思う。連携というと「連携は重要である」「連携を強化しなければいけない」ということを耳にするが、実際には連携がなかなか進まない所が多いのではないか。「顔の見える関係を作る」ということは重要だが、その前に自院の立ち位置、得意分野を明確化して地域で自分たちの果たせる役割は何かを考えることが重要と考える。
  さらにアライアンス連携の経験から言えることは、「当院、連携先双方のニーズを満たすような仕組み」を作ることも連携においては重要なポイントである。
  この後、こうした熊本の連携やアライアンス連携について、回復期の立場から森先生にお話しいただけるが、本日の熊本の連携の話が皆さんの地域での連携のあり方を考える参考になれば幸いである。
  今回の診療報酬の改定と今後の連携について、私の話を終わる。ありがとうございました。

〇副島:
  長年の連携、平成4年頃から20年以上やっていて、だいぶ進化してきた。質を保ちながら継続性を確保することが重要なポイントである

(了)

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