日本長期急性期病床(LTAC)研究会 第5回研究大会 開催報告

記念講演



平成30年医療・介護同時改定
toward & beyond 変わるのは,今だっ!


座長:小山秀夫(兵庫県立大学大学院経営研究科名誉教授)

講師:鈴木康裕(厚生労働省医務技監)



〇小山:鈴木医務技監の本日のテーマは、「変わるのは、今だ」という非常にインパクトあるタイトルで、非常に盛り上がるのではないかと感じています。鈴木先生はお若い時にWHOにおられ、私自身長いお付き合いをさせていただいております。それでは鈴木先生、よろしくお願いします。

 

〇鈴木:私が医療課長をしていたのは平成24年、本日のテーマである地域包括ケア病棟は平成26年、宇都宮課長のときに新設されましたが、私も2つの面で地域包括ケア病棟はいいのではないかと思っています。1つは亜急性期病床としてそれまで議論されてきましたが、地域包括ケアのための病棟という少し広いイメージもあり、名称がとてもよいと思います。

 もう1つは医療法上の一般病床、療養病床の区別のほかに、診療報酬上でこのシステムをつくった点です。一般病床からも療養病床からも取得できるという柔軟な制度であることが非常にすばらしい。

 ちなみに宇都宮さんに会いますと、「医療課長も老健課長も鈴木さんの後で私はいつもマイナス改定だ」とおっしゃいます。医系技官は300人おりまして、診療報酬と介護報酬で課長を務めたのは3人だけですが、両方ともプラス改定は私だけです。

 私は平成30年の改定は惑星直列と捉えています。いろいろなことが一斉に起こり、かつこれからはそれが6年ごとに繰り返されます。1つは診療報酬と介護報酬の改定。また地域医療計画、介護保険事業計画。地域医療計画は5年ごとでしたが来年から3年ごとの介護保険事業計画に合わせて6年ごとに見直すことになります。つまり報酬改定と計画づくりが6年ごとに回ってきます。

 先ほど小山先生から指摘されましたが、なぜ今、変わらなければいけないのかということを私は3つの軸でお話しさせていただきます。1つは人口構造、医療ニーズの変化で相当なミスマッチが起きています。2つ目は最近若干よくなっているものの財政状況が急速に悪化しています。やはり相当な効率化が求められています。3つ目は新しい技術が医療に入ってきています。これもうまく取れ入れないと混合診療などによってお金を持っている人だけが利益を得るということになりかねません。そうさせないことが大事になります。

 まず人口の推移です。2010年ころまでの高齢化とそれ以降の高齢化では質的に全く異なり、前者は高齢者が爆発的に増えている。しかし、2010年以降は高齢者自体の増加は抑えられ、生産年齢人口が急激に減少している、いわば数字上の高齢化といえます。2050年の生産年齢人口は今より40%減るといわれています。現在も医療機関は求人難のところが多いと思いますが、今後はさらに人手不足が深刻になるということです。

 高齢化の要因の1つには団塊の世代が高齢になっていくことが挙げられますが、団塊の世代は生まれたときは250万人を超えており、今の出生数の2.5倍に上ります。この方たちが2025年に全員、75歳を超えます。そうすると当然、医療や介護の需要がピークとなる。厚労省の直近の仕事としてはこの大きな波が押し寄せるなかで医療や介護の基盤をどう整備していくかです。しかし、おそらく2040年を過ぎると日本の医療・介護のニーズはピークアウトして減っていくことになる。つまり医療機関は50年のスパンでみると増えていくニーズと減っていくニーズの両方に備えなければならないということです。

 しかし高齢化といっても各地で均等に進んでいくわけではなく、特に大都市圏では今後、急激に高齢者が増えていきます。

 死亡者数も2006年は100万人くらいですが、2040年には160万人に増加していきます。2006年当時、この体制のままで推移していくと160万人のうち約50万人の方の最期を迎える場所がないと推計されていました。しかし、その後、有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)が合わせて40~50万人分増加しており、ある意味、当時の私が心配をしたことをこの2つの施設が引き受けてくれています。しかし2つ懸念があり、1つはまだまだ高額です。もう1つはサ高住の運営主体の半数以上が株式会社で、医療法人や社会福祉法人は3割程度です。その辺のところはまだまだ様子をみていく必要があると思います。

 在宅医療に関する国民のニーズについて示します。平成19年度内閣府の調査によると、6割以上の方が「自宅で療養したい」と回答しています。しかしながら、自宅で最期を迎える方は15%程度。その原因として考えられるのは、介護をする家族に負担がかかるということと、症状が急変したときに病院に入れないということです。逆にいうと家族の負担を減らし、在宅療養者の後方ベッドを確保・整備していけば、家で療養して何かあったらすぐに入院するという暮らし方ができる。

 人生の最終段階における医療について家族と話し合ったことがあるかという調査では、「詳しく話し合っている」はわずか2.8%。一方、意思表示の書面をあらかじめ作成していくことへの賛否は約7割が賛成しています。このギャップを埋めていくことがこれから大事になってくると思います。

 次に財政についての話です。平成12年度を100とした場合、平成28年度の一般歳出に占める項目別指数をみると、公共事業関係費68.3、文教および科学振興費82.1、防衛費も102.4にとどまっているのに対し、社会保障関係費は190.7という高い伸び率を示しています。高齢化が進んでいるなかである意味、増加するのは当然ですが、他のセクターからみると「なぜ社会保障だけが」となるのは否めません。

 一方、収入のほうはバブル崩壊以降、所得税、法人税が急激に落ち込むなか消費税の税率アップで埋めてきた部分があり、社会保障費も消費税に依拠せざるを得ないのがご理解いただけるかと思います。 

 来年に向けて国家財政の集中改革期間(3年間)を実施していまして、この3年間で社会保障経費の伸びを1兆5,000億円程度に抑えるということにしています。つまり年間5,000億円程度です。平成28年度は6,700億円伸びるのではないかと予測されたため、薬価改定等で1,700億円削減。平成29年度は6,400億円と推計され、1,400億円程度圧縮しました。今年度は診療報酬改定がなく薬価改定を使えませんので、高齢者の高額療養費の限度額の変更や介護納付金の総報酬割、協会けんぽ国庫補助の見直しなどでやり繰りしました。

 そして来年は6,300億円の伸びが見込まれ、1,300億円を削らなければなりません。ここからは正確にいうのは難しいのですが、平成28年度と同様に薬価改定で調整できれば、診療報酬本体をプラスにするのはそれほど難しいことではない。

 ただし、子育て支援、例えば保育園の無料化などを実施し、これを社会保障費の枠にすべて収めるとなると、おそらく相当なマイナス改定になると予測されます。今度の総選挙で安倍首相も「社会保障の全世代化」と進めており、これ自体は正しいのですが、そのなかで診療報酬の原資がどうなるか少し読めないところではあります。

 2015年度の医療費は42.4兆円ですが、最近、2016年度の概算医療費が出たばかりです。この数値は正確なものではありませんが、2015年度から少し減ります。これは自己負担増で受診抑制が働いた2006年度以来、つまり10年ぶりです。増えたのは高齢化の影響が1.2%、その他(医療の高度化等)が2.7%で、その他のほとんどは外来と調剤で占められています。さらに調剤を分析するとほとんどが薬剤料でその大半が化学療法剤です。この化学療法剤は主としてC型肝炎の薬ですが、この薬でC型肝炎は100%治るため、どんどん患者さんが減っています。この患者減の影響や薬価の切り下げが医療費全体の削減につながっている。もちろん医療費増加のトレンドは2025年まで続きますが、1990年代や2000年代のようなものすごい勢いで医療費が伸びていくということはなく、こういう薬の開発が少しあると医療費が削減される時代ということです。

 日本の医療費は高いのかというと議論があります。高齢化が進めば社会保障費の国民負担率は高くなりますが、日本は最も高齢化が進んでいる一方、国民負担率は40%ほどでそれほど高くない。高齢化率に比べれば日本の医療を含む社会保障費はそれほど高くなく、これは現場の先生方の頑張りのおかげと考えています。

 地域医療構想の話をする前に、それに関連する日本の医療の現状について少し説明したいと思います。例えば、ドイツの場合、85%の病床が国公立病院であるのに対し、日本は30%にすぎません。施設数でいうと日本の国公立病院は20%くらいです。

 半面、病床数の半数以上、病院数でいうと65%は民間=医療法人が運営しています。公的に対しては行政の一言で変えていくことが可能ですが、民間の場合は医療がどう変わっていくのかを納得していただいたうえで、経営の舵とりの変更をお願いしていくということになります。その気づきはなるべく早い方がよいと思います。

 また、10年間の救急搬送された方の年齢や重症度をみると、年齢別では高齢者が多く、また高齢者のなかでも軽症・中等症が増えています。高齢者の発熱や脱水などですが、こういう方たち全員が三次救急の窓口にこられてしまうと、いざ重症の患者さんが発生したときに診られないという事態も招きかねませんので、私は地域包括ケア病棟のようなところで対応していくのが非常に大事だと思います。

 一方、人口1,000人当たりの臨床看護職員数の各国比較では、日本は他の先進国と同程度の10人となっています。しかし病床100床当たりの臨床看護職員数はアメリカの5分の1程度です。これだけ少ないと当然、患者さんと接する時間も短くなり、事故も起こりやすい。あまりにも日本の病床が多いがゆえに起こる現象であり、われわれの選択はこのまま続けるか、もう少し病床を集約してスタッフを配置していくか、どちらかの方向に軸足を置かないといけないと思います。

 また、医療の中身についても歳をとるごとに、とことん型の急性期医療から亜急性期型、生活支援型の「まあまあ」医療が増えていきます。そうなると人口構造の変化に伴い、地域ごとに目指すべき医療の方向性を考えていかなければいけません。例えば、埼玉県の場合は亜急性期だけでなく、急性期も増やしていく必要がありますし、逆に高知県は急性期だけでなく亜急性期も減らしていかなければいけません。

 2025年の高齢化の状況についても地域ごとに捉えていく必要があります。2015年の75歳以上人口を100とした場合、2025年に埼玉県は160近くと急増しますが、一方で島根県は105とほとんど増えないことがわかります。

 入院患者数はどうなるかというと、千葉医療圏の場合、2040年になるとお産は今より40%減となりますが、2030年の段階では肺炎の入院患者が60%、脳血管疾患の入院患者さんは40%強、増加することが見込まれています。

 このようにマーケットが変化していくことがわかっているのであれば、先生方がそれにどう備えられるか、大事なのは今から10年後、20年後を見据えてそれぞれの病院が地域でどう変わらなければいけないかを考えていくことが必要かと思います。

 例えば、診療分野別手術患者の地域患者シェアを分析し、地域でシェアが高く、実患者数も多い疾患についてはその病院の売りになりますから積極的攻勢に出ていきます。シェアは低いけれども実患者数が多い場合は、二次医療圏のなかで競合するのではなく、機能分化してその治療の一部を担うような差別化戦略を行っていくといったことも考えられます。

 また、地域内の病院で得意分野の科目・疾患を集中させていくといった戦略も、限りあるリソースを集約して医療の質を高める、あるいは医師の勤務状況の改善を図るうえでも視野に入れていくべきでしょう。もちろん、アクセスの問題もありますが、病院が集中しているような地域では可能かと思います。

 現在、全病床数は133.1万床です。「地域医療構想」による2025年の必要病床数は約120万床で13~14万床しか減っていませんが、高齢人口は増えていますので30万人くらいが介護施設あるいは地域で療養していくことを見込んでいます。しかし2つ難しい面があり、1つは先ほど指摘したように6割以上が民間病院というなかでそのオーナーの先生方にどう変わらなければいけないかということを納得していけるか。それは国や患者さんにとってだけでなく、先生方にとっても良いということをわかっていただけるかどうかです。

 もう1つは30万人を想定している介護施設や在宅療養もそこでの医療的ケアが整備されていないと絵に描いた餅とならざるを得ません。2025年まで数年しかありませんが、わずかな期間にどう整備するかが問われてきます。

 診療報酬改定についてお話します。平成28年診療報酬改定は見かけ上、診療報酬本体は+0.49と書かれていますのでプラス改定と思われがちですが、実態としては0.7%程度のマイナス改定です。さらに市場拡大再算定による薬価の見直し等は含まれていませんので、実質上は非常に大きなマイナスでした。医療経済実態調査の結果がこれから出ますが、おそらく実質上のマイナスを反映したかたちになっているはずです。ただし、薬価改定の▲1.22%はすべて医療機関でかぶるわけではなく、いまや薬の半分以上は調剤薬局で出していますので、そこは割り引いてみていく必要があります。

 ちなみに病院の1日あたりの外来の診療報酬点数をみると、この10年間で886点から1,363点と大幅に伸びています。一番伸びているのは注射で、特に抗がん剤を外来で行うようになったのが1つの要因です。診療所も少し伸びており、在宅医療や検査などの寄与率が高くなっています。

 ただ、同じ建物内への在宅医療については平成26年度の改定で通常の4分の1にするなど大きなメスが入りましたが、28年度改定では単一建物診療患者の人数と重症患者かそうでない患者かを掛け合わせたものにしました。それ以外にも有料老人ホームやサ高住も同じ建物として以前と比べると厳しくなった部分もあります。これは引き続き介護分野との整合性を図りながら見直していきたいと考えています。

 最後に医療技術の進歩についてですが、医療における技術の進歩は非常に激しいです。例えばゲノム医療やAIを使った医療などです。

 1つは指定難病について厚労省では難病の最終診断はゲノム診断と言っていたにもかかわらず、診療報酬として42疾患のゲノム診断が認められていなかったため、それを前回の改定ですべて評価されるようにしました。また、イレッサはEGFR遺伝子変異のある・なしで奏効率が大きく異なってくる。変異なしの場合、奏効率は27.5%ですが、変異ありの場合は76.4%に跳ね上がります。抗がん剤は細胞毒性による副作用がありますので、ゲノム情報によって効く人を限定できれば、無駄な投薬をしなくても済みます。

 しかし、1つずつ行っていくのは大変時間のかかる作業ですので、100個くらいの遺伝子変異を同時に測るような体制をつくり、今年中には先進医療、再来年くらいには保険診療にしていきたいと考えています。

 もう1つはAIです。例えば画像認識のところで使えるのではないかということで、病理学会、放射線学会、内視鏡学会と協力して、画像や臨床症状を数万例ずつ集めていただきます。それで何ができるかというと、1つは病理医のように各病院にいるわけではなく専門医が足りないようなところで一定の画像をAIから導き出す、かつそれを遠方に送って専門医に診てもらうといったダブルチェックも可能になる。そういうところで世界をリードしていければと考えています。

 それから医療・介護分野におけるICTの活用ですが、現在日本はNDBというレセプトのデータベースがあり、DPCのデータ、介護のデータも電子化された状態で保有しています。問題はこの3つがつながっていないために、より深い分析ができないという状況です。

 そこで今、われわれが行おうと考えているのは、1人ひとりに番号をつけて追跡していこうとしています。もちろんセキュリティやプライバシーの問題もありますが、こういうことを行って先ほど小山先生がおっしゃった各病院の立ち位置、もしくは全体のなかで他の病院のことがわかるというようにしていきたいと考えています。

 次に7対1病床についてお話しさせていただきます。平成18年に導入された当時、どれくらいの病床を想定していたかというと、当時の医療課長は「2万くらいだと思います」と答えたそうですが、それが一時38万床まで膨れ上がりました。そして今、少しずつ算定基準を厳しくして36万床になりました。

 前回の改定で7対1の病院で10:1の併用を認めたのですが、2年間以内に7対1を60%にしなければならないという厳しいルールで、私の記憶だと8病院くらいしか算定できていません。もう少しここは柔軟に考えていいのではないかと考えています。

 同時改定に向けて問題整理させていただくと、1つは看取りです。介護施設の看取りに医療保険がどう絡むか、それとも絡まないのか。また訪問看護など訪問系サービス体制の構築も重要です。さらに嚥下性肺炎のケアの問題については、武久先生からいただいた資料によると摂食嚥下訓練の開始時は経口摂取がわずか14%でしたが、訓練実施後は実に83%の方が経口摂取できました。私たちはこういう「口から食べられるようになった」というアウトカムに対して支払いをするということを考えたらいいのではないかと思います。

 将来に向けては、そういうアウトカムに基づく評価というのが1つと、それから医師は相当多忙になりますので他の職種でできることはその職種に行ってもらうことが必要かと思います。

 それに関連して「医師の働き方改革」についてですが、現在検討されているのは罰則付きの残業規制です。ただ、医師の場合は省令で定めるということになっており、今から7年後に施行される予定です。とはいえ、医師は人の命を預かる仕事ですし、一般の労働者と一緒に扱っては困るという先生方のお気持ちはよくわかりますけれども、法律上は「医師も一般労働者」であり、それを今から覆すのは非常に難しいです。むしろ労働と研修の線引き、例えば文献を読んでいる時間は労働時間から外すといったことを行っていくしかないと思います。

 もちろん、地域医療への影響が出ては困りますが、最近は女性医師が増え、若い医師の働き方への意識はわれわれ世代と比べると相当異なってきています。なんとか先生方のご理解をいただいて2年以内に大きな影響がでないような規制にしていきたいと考えています。

 実は診療報酬改定は、医師の需給にも影響します。例えば、医師の労働時間を短くするのであれば医師をもっと養成しなければいけない。そうなると診療報酬でそれを手当てしていくということも必要になるので、働き方改革は医療現場や財政、さらには医学部のマネジメントにも大きな影響を及ぼすことになります。そういうことを含めてご理解いただければと思います。ご清聴ありがとうございました。

 

〇小山:ご質問、ございますでしょうか。

 

〇質問:回復期リハの仕組みができる前は家に帰り、悪くなると入院を繰り返すことで自宅での生活を保ってきたわけですが、回復期リハができてリハスタッフが専従となり、退院後は場合によってはスタッフが訪問リハに赴き、再び入院させるということが難しくなりました。また、地域包括ケア病棟は役に立つが在院日数の制限がある。この辺りをもう少し柔軟に運用できるようにしてもらいたいと思います。

 

〇鈴木:地域の状況については霞が関からはなかなか見えないところが多いです。まだ間に合うと思いますので現場から、そのような問題点や具体的な提案をどんどん上げていただきたいです。

 

〇質問:鈴木先生にお尋ねするのは違うかもしれませんが、病院の消費税問題に対するお考えをお尋ねします。

 

〇鈴木:私の持論は、診療報酬で補てんすべきでないということです。どういうやり方をしても公平には分配できない。例えば建て替えや高価な医療機器など大きなコストの消費税部分を処理できるしかけを考えていく必要があると思います。

 

〇質問:働き方改革について、医師全体が忙しいわけではなく、研究や全身管理をする医師が突出して忙しい。タスクシフトといわれていますが、多忙な医師にはあまり関係がなさそうです。この部分を解決するためには、そういう分野の医師を増やしていくしかないと思います。まだ間に合うということですが、来年救急などの評価を厚くするということが現実的に可能なのでしょうか。

 

〇鈴木:おっしゃるとおり、やはり救急や産科の医師に仕事が集中しています。しかし、来年改定で点数を上げれば、シフトしていくかというとおそらく無理でしょう。これは医師の養成などパッケージで考えていく必要があります。

 特に2年後に向けて何をすべきか。1つは、やはりタスクシフト。医師でなくてもできる仕事は他職種に移していく。もう1つは労働と研修の線引きの明確化です。例えば病院にいてもこれは労働時間としてカウントしないということを決めていく。3つ目はいくつかの科については例外を設けなければいけない。

 とはいっても放置するのではなく、病院長と本人が同意したうえで改善計画を策定して基準局に届け出る、その代わりに例外を当面認めていくといったことです。しかし将来的にはご指摘にありましたように、多忙な診療科の医師数を増やしていくような施策を行わないとこの問題の根本的な解決は難しいと考えています。

 

〇質問:当院は地方の中核病院でHCUもあります。前回改定でHCUがあると地域包括ケア病棟は1つしかつくれないと規定されました。当院はさいわい、改定の前に地域包括ケアをつくっていたのですが、県の地域医療構想では回復期はまだまだ足りません。医療構想と診療報酬が非常に矛盾している状況で、構想に沿えないところも出てきています。

 

〇鈴木:一言でいうと地域によって違うところがあると思います。HCUのある病院が地域包括ケア病棟1つというのはもともとのルールで、急性期中心の病院に多数、地域包括ケア病棟をつくっていくのは違うのではないかということです。ただし、地域において病院が1つしかないような場合は一定程度移行できるようにするといった、地域ごとの扱いが大事です。それは来年改定で考えていくべきではないかと思います。

 

〇小山:鈴木医務技監のますますのご活躍を期待します。ありがとうございました。

 

(了)

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