日本長期急性期病床(LTAC)研究会 第5回研究大会 開催報告

シンポジウム



「地域包括ケア病棟の検証」

 

座長:池端幸彦 (池端病院理事長)

    高橋泰 (国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野教授)

 

演者:仲井培雄 (地域包括ケア病棟協会会長)

    邉見公雄 (全国自治体病院協議会会長)

    土井章弘 (岡山旭東病院院長)

    宮田和信 (相澤東病院病院長)

    齋藤淳 (下松中央病院理事長)

    志田知之 (志田病院理事長)



〇池端:本日のシンポジウムは「地域包括ケア病棟の検証」というテーマです。LTAC研究会が設立し、その後に地域包括ケア病棟ができました。もともと急性期と慢性期をどうコラボしていけばよいのかという会でしたが、まさに地域包括ケア病棟はそれを実践する場だと考えます。

 この病棟を検証するための素晴らしいシンポジスト6名を迎えています。前半は検証中心、後半は実践的な取り組みというかたちで進めさせていただきます。よろしくお願いします。

 

〇高橋:国際医療福祉大学の高橋です。座長は前半は私、後半は池端先生が務めます。その後、ディスカッションという形になります。

 まず仲井先生にご発表いただきますが、仲井先生は私と同じ石川県の出身で、地域包括ケア病棟協会等で長いつきあいをさせていただいています。データを駆使していろいろなことを次々と明らかにしていく今までにないタイプのリーダーで、地域包括ケア病棟がここまで伸びた立役者といっていいでしょう。第一演者として同病棟の方向性を示していただければと思います。

 

〇仲井:高橋先生、ありがとうございます。地域包括ケア病棟は言うまでもなく、人口減少、少子高齢化社会、地域間格差、地域医療構想策定、さらに地域包括ケアシステムの構築などの大きなうねりのなか、必要な病棟ということで徐々に認知されてきたのではないかと理解しています。

 特定入院料を算定する病棟の病床機能は、ICUなら高度急性期、回復期リハ病棟なら回復期、療養なら慢性期となっていますが、地域包括ケア病棟だけは急性期から慢性期まで幅広い。これが逆に同病棟の機能をわかりにくくしているのですが、裏を返せば、上手く使えば使い勝手のよい病棟といえます。

 地域包括ケア病棟には4つの機能があります。3つの受け入れ機能であるポストアキュート、サブアキュート、周辺機能、そして在宅復帰支援機能です。周辺機能を除いて3つの中核機能はもともと厚労省が最初から定義している機能で、周辺機能は当協会が後から提言したものです。

 それぞれ説明しますと、ポストアキュートは急性期・高度急性期からの入院で、院内外は問いません。急性期および回復期が必要な患者さんを受け入れます。例えば、大きな病気や手術をした後の高度急性期を脱した患者さんを受け入れます。

 サブアキュート機能は、在宅や介護施設で療養生活中の生活支援が必要な患者さんを緊急に受け入れます。障害児・者から老年症候群と年齢は問いません。主な疾患は、肺炎、腸炎、脱水、緊急手術・麻酔が必要な骨折・外傷等の軽症急性疾患です。

 周辺機能は、中核機能の補完と7対1~13対1など一般病棟の代替機能です。周辺機能(緊急時)は、サブアキュートと疾患は同様ですが、日常的な生活支援が少ない患者さんの緊急時の受け入れを行います。また周辺機能(その他)は、原則的に予定入院患者を受け入れます。例えば、化学療法や緩和ケア、手術、麻酔、糖尿病教育入院、医療必要度の高いレスパイトケアなどです。

 地域包括ケア病棟の状況についてですが、平成28年度の地域包括ケア病棟の機能等に関する調査によると、中核機能は76%、周辺機能は24%でした。ポストアキュートが最多で63.5%、うち院内からの転棟が83%を占めています。サブアキュートと周辺機能の緊急時の受け入れを合わせるとだいたい2割くらいで、ともに救急搬送が1割以上あります。

 平均をとるとこういう状況ですが、個別にみるとバラつきが多い。つまり施設ごとに使い方がかなり異なるということです。なぜかということでいろいろ調べると、一般病棟10対1以上の有無で機能が大きく異なることがわかりました。

 10対1以上があるとポストアキュートが7割、なしの場合はポストアキュート、サブアキュート、周辺機能がそれぞれ3分の1ずつになります。そしてポストアキュートの内訳は10対1以上があると院内から、10対1以上がないと院外からがそれぞれ9割を超えていました。

 ただ、10対1以上の有無で機能が違うといってもピンとこないかと思い、地域包括ケア病棟を有する病院における3つの病院機能という仮説を立てました。急性期ケアミックス(CM)型、ポストアキュート(PA)連携型、地域密着型と分けています。

 急性期CM型の定義は10対1以上の病棟を有して施設全体で急性期機能を最も重視しています。急性期対応が強みで、地域包括ケア病棟は院内のポストアキュートが中心になります。しかし、サブアキュートと院外ポストアキュートの地域ニーズへの対応と、在宅・生活復帰支援の充実、後方病院との信頼関係維持が課題です。

 PA連携型は施設全体として、実患者の概ね半数以上が他院からのポストアキュート患者です。高度急性期から急性期機能の連携先にポストアキュートで価値を提供するとともに、回復期リハや療養など後方病床の引き出しと訪問・通所・入所の併設施設が豊富です。このタイプは民間病院、しかも大都市に多いです。

 それから地域密着型は、CM型でもPA連携型のどちらでもなく、その中間的な機能になりますが、200床未満の比較的小規模な病院が多いです。日常生活圏域のサブアキュートに主に対応していますが、なかには手術を精力的に行っている病院もあります。

 それぞれの構成割合は急性期CM型が約半分、PA連携型が約15%、地域密着型が約35%となっています。もう1つ、この後、相澤東病院の宮田先生がお話されますが、全病棟が地域包括ケア病床という地域包括ケア病院もあります。ただこれは形態分類ですので、機能的には地域密着型かPA連携型になります。

 在宅・生活復帰支援は、院内と地域内の多職種協働が重要です。院内ではできるだけ早く、在宅・生活復帰ができるまで回復しているか。そのための治療にはEBMとナラティブアプロ―チの両方を行っていく必要があります。リハビリや栄養管理、認知症対策、多剤投与対策、退院支援・調整等を行います。

 地域内の多職種協働は、併設施設の有無を問わず、地域包括ケアシステムを構築できているかが問われます。かかりつけ医をはじめ介護福祉事業所などさまざまなプレイヤーがいるのでまとめるのはなかなか大変です。

 院内と地域内をつなぐ連携の力も必要で、院内の地域連携室や入退院支援室、地域内の地域包括支援センター、居宅介護支援事業所などをPerson Flow Managementという概念でつないでいきます。患者さんを生活者の視点で捉えて、病院と地域を一体と考え切れ目のない医療介護を提供するというものです。在宅や施設で生活していた人が入院する場合、情報も一緒にもっていかなければいけません。かつ、そのいただいた情報を活用して院内の多職種が患者さんの要望に応えていきます。そして、よくなったらまた在宅に帰るわけですから、そのときにまた在宅スタッフに情報を渡します。ですので、できれば全国統一、院内地域内共通の生活支援評価票があれば今後スムーズに連携が図れると思います。

 今年7月までの地域包括ケア病棟の届出は1,969病院。推計で62,600床です。届出病床は療養病床から6.9%、一般病床が93%。うち医療法上の療養病床だけの病院はわずかに2.1%です。地域包括ケア病棟を有するには、救急搬送の受け入れや在宅療養支援病院の届出などハードルが高いという声をよく聞きます。逆に急性期の一般病床のほうが相対的に届出のハードルが低い状況となっています。

 一般病棟10対1以上の届出の有無と許可病床200床以上・未満の4つ分けてみると、一番届出が多いのは10対1以上あり・200床未満の病院。次いで10対1以上あり・200床以上の病院、10対1以上なし・200床未満の病院の順となっています。数は少ないですが、10対1以上なしの200床未満の病院の届出は、急性期機能を持つであろう10対1以上の病院に遅れることなく、2度の改定時に加速度的に増えているという状況が認められます。

 今回の平成29年度地域包括ケア病棟の機能等に関する調査についてご報告します。実施期間は6月で1,894病院にアンケートを発送し、約3割の616病院に回答いただきました。

 病院の基本情報としては民間病院が7割、二次医療圏の都市型分類では地方都市型が半数以上、許可病床数の規模は50~99床、100~149床、150~199床でそれぞれ2割以上ずつを占めており、50~99床が前回より増えていることが目立ちます。

 併設している介護サービス等の状況ですが、訪問系65%、通所系54%、介護施設44%、居住系33%とだいたい10%ずつ下がっていくという状況です。転換前の病床の種類は、7対1、10対1、亜急性期からがそれぞれ約2割で、亜急性期は今後調査のたびに下がっていくと思われます。転換前の病床の医療法上の位置づけは、一般病床が83%、療養病床が10%です。

 地域包括ケア病棟を開設した理由については、7割を超える病院が「地域のニーズや患者の状態に即した医療を提供できる」ことを挙げており、6割を超える病院が収益の上げやすさを期待していました。院内多職種との関係の変化は「深まった」と回答した病院が7割超、地域内の多職種との交流の機会も6割弱が「増えた」と回答しています。

 また、病棟構成の見直しの際に他施設との調整を行ったとの回答が25%ありました。在宅医療・介護機能は3割もの病院が「充足している」と答えていました。

 地域包括ケア病棟への転換後の病院全体の経営の傾向については、6割弱が「増収増益」、2割が「変化なし」、減益と回答した病院は15%未満でした。開設の経営状況への影響は、「影響あり」が4割を超えていました。増収増益、増収減益、減収増益の病院は、開設の影響があったと回答した割合が最多で、増収減益、変化なしの病院は、開設の影響がなかったと回答した割合が最多でした。ケア病棟開設の影響があったと回答した病院のうち、増収増益が6割超と最も多かったという状況です。

 増収増益と回答した病院の自由記述では、「院内の機能分化が進んだ」、「他病棟との組み合わせでムダがなくなった」「外部からの紹介が増え、連携が深まった」「平均在院日数が短縮した」と回答しています。

 在宅・生活復帰支援のための取り組みとしては、リハビリ、家族との退院調整、ケアマネとの連携に取り組んでいる病院が8割以上と多く、院内地域内共通アセスメント、多剤投与対策、リハビリ栄養に取り組んでいる病院は3割未満と少なかったです。

 POC(Point of Care)リハは疾患別のリハと異なり、場所や時間や単位に縛られない、個別に短時間、オンデマンドで介入するリハの総称ですが、POCリハを提供している病院は3分の1となっています。地域包括ケア病棟協会の会員病院は「提供している」または「今後予定している」割合が過半数を超えていました。

 次に一般病床と療養病床の比較をしてみます。医療療養からは平成28年度以降の転換が多い。また療養病床からの転換のほうが一般病床からの転換より入院料を届け出ている割合が多く、管理料を届け出ている割合が少ない。稼働率も療養病床からの転換のほうが低めの施設が多いです。平均在院日数は一般病床からの転換の6割は30日未満ですが、療養病床の場合は7割を超える病院が30日以上でした。

 ただ、増収増益は療養病床のほうが一般病床より13%と多く、経営への地域包括ケア病棟の影響も約17%多いという結果でした。療養病床からの転換のほうが経営的に若干良いのかと思います。

 再掲になりますが、ケア病棟を開設した理由について、周辺の急性期病院の転換による影響で自院の回復期、慢性期の患者が減ったためにケア病棟を開設した病院はわずか2.9%でした。個人的にはこの理由がもっと多いと予想していましたが、意外と少なく少し驚きました。

 まとめると届出病院の満足度は低くないと思います。急慢公民すべての医療機関において、院内・地域内の多職種協働が重視され、地域包括ケアが進んでいる兆しがあり、経営への期待も大きく、ある程度の成果も伴っています。一方、急性期病院が地域包括ケア病棟を開設して、院内急性期病棟から患者を受け入れることに対して、「病病連携を阻害する」との意見もあります。さまざまな地域ニーズに応え、かつ在宅・生活復帰支援を充実させていれば問題はないですが、それが欠落しているのであれば問題ありだと考えます。

 ではどうして地域包括ケア病棟に対する不安や不満が聞こえてくるのでしょうか。そこを分析していくと、地域包括ケア病棟を活用して地域ニーズに応えたいけれども届出が難しいというケース、在宅・生活復帰支援がさまざまな理由で充実していないケースが考えられます。背景にはおそらく多職種協働促進による人員増や平均在院日数短縮と病床稼働率低下による収支の悪化、救急・リハビリの増強や減床等の自院機能の見直し、治す従来型医療から治し支える生活支援型医療への意識改革、これらへの不安があります。

 そこで30年度改定に向けた要望と30年以降の改定に向けた提言を出してみました。救急や在宅へのハードルが高いという課題に対しては、緊急時の受け入れや在宅・生活復帰支援の強化と評価に結び付けています。

 また、地域包括ケア病棟と別の病棟の組み合わせや病院の規模によって地域ニーズの変化に迅速・柔軟に対応しにくくなるという課題については、ケア病棟を持つ病院のあり方という提言になっています。最後に在宅・生活復帰支援が充実していないというケースは、在宅・生活復帰支援の強化と評価を考えていきましょうということになります。

 まず緊急時の受け入れについては、ストラクチャーで評価するよりも、プロセスやアウトカムで評価してみたらどうかという提言をしています。これまで届出できなかった病院でも地域ニーズに対応するために緊急時の受け入れをより評価してはどうかということです。今、中医協で話題になっている自宅からの受け入れは、緊急時の受け入れとその他の受け入れを足したものだと考えています。

 次に入退院支援の取り組みですが、入院前後で生活支援の程度を重くしない、もしくは軽減させることが重要ですので、そのプロセスやアウトカムを評価することで在宅・生活復帰支援を促進する必要があると思います。発症前・入院前の生活の状況を知ることでそれが可能になります。現場の意識は退院支援から入退院支援に向かっていると思います。

 調査でも、発症前の日常的な生活支援の必要性についてはほとんどの病院が把握、あるいは一部把握しています。入院前・発症前の生活支援の情報を得た際の評価では、ケアマネジャーは介護報酬の入院時情報連携加算で評価されていますが、病院では直接評価されていません。よって、入院前あるいは超早期から双方向の医療介護の情報共有に対して評価してもらえないかと提言しています。

 在宅・生活復帰支援機能のアウトカム評価ですが、院内多職種協働ではリハビリ、栄養、認知症ケア、多剤投与等はすべて包括算定です。現行の報酬では「ときどき入院、ほぼ在宅」をやればやるほど利益が出にくくなる。発症前の生活でできていたことを100%としてその改善度が見える化できれば、アウトカム評価を行い、成績のよい施設をプラス評価することができます。

 例えば、積極的に在宅・生活復帰支援を行って平均在院日数を短縮した場合と、積極的に行わないで在院日数を伸ばした場合では、前者のほうが利益が出にくい構造となっています。そのため地域で発症前の評価を行い、入院してからは入院時、途中、退院時に地域で在宅復帰を評価して初めて改善率がわかる。これを行うには全国・院内地域内共通の生活支援評価票が必要になってくるわけです。

 全国統一の院内・地域内共通のアセスメント票を開発すると、データマイニングしやすくなるのでデータをアップロードすれば、ケア病棟の受け入れの実態をより精緻に分析できますし、2020年度以降の健康・医療・介護ICTによるビッグデータ解析にも活用可能ではないかと思います。さらに、医療、介護・福祉人材の養成課程で必要な、複数資格の共通基礎課程において、効率的なアセスメントの履修が可能と考えています。

 最後に、地域における地域包括ケア病棟のあり方です。求められる病院機能は地域により大きく異なり、しかも動的に変化していきますので、ストラクチャーによる一律の基準や評価だけでは地域ニーズの変化に対応できなくなります。地域特性に配慮して地域包括ケア病棟と500床未満の病院の高度急性期を担う病床の組み合わせによる診療報酬上の制限を緩やかにし、ケア病棟を2病棟以上届け出る場合には地域医療構想の協議の場で話し合うことにしてはどうかと提言しています。

 地域医療構想のゴールは2025年です。地域によって将来人口の動向はまったく異なってきますが、減少段階が進む地域では拠点となりえた「高度急性期~急性期病院」以外は、病院機能も動的に変化していきます。数年立てば急性期CM型から地域密着型にしていかざるを得ないケースも考えられますし、回復期や慢性期の病院が地域密着型になることもあると思います。したがって結果的には地域密着型が今後増えていく可能性はあります。

 一方、減少段階の歩みが遅い大都市部では、急性期病院や回復期、慢性期からPA連携型、地域密着型へなっていくと予想されます。今後は介護医療院も出てきますので、介護医療院と地域包括ケア病棟の併設という形も出てくると思います。

 地域包括ケア病棟を最大限に活用しなければ、地域包括ケアシステムと地域医療構想は成り立たないと思います。地域ニーズに合わせて自院の機能を変え、院内・地域内の多職種と住民を巻き込み、そして在宅・生活復帰支援を促進しようとする病院が、安心して持続可能性を追求できるように、皆さんと一緒に地域包括ケア病棟を育てていきたいと思います。ありがとうございました。

 

〇高橋:仲井先生の言われる周辺機能というのが採算が合うのかということと、地域包括ケア病棟の増え方についてどのようにお感じになられますか。

〇仲井:亜急性期が出てきたころに比べると7対1の運営が厳しくなってきていることと、生活支援型医療にかかる人口が増えてきました。それによって7対1が維持できなくなったのですが、その代替機能としての周辺機能を地域包括ケア病棟で使えることがわかりました。それが大きく伸びた理由の1つだと思います。あまり周辺機能については言及していませんが、皆さんそこは結構活用されているのではないでしょうか。

 

〇高橋:ありがとうございます。次の演者の邉見先生は公立病院の立ち位置で大活躍されている先生です。亜急性期病床の前身といえる全日本病院協会が提唱していた地域一般病棟はどちらかというと民間を意識してデザインしたものですが、地域包括ケア病棟にはかなり公立病院も入ってきています。それを踏まえまして現在の地域包括ケア病棟の評価についてお願いいたします。

 

〇邉見:ご紹介いただいた邉見です。本日は私の命をささげた地域包括ケア病棟がテーマになろうかと思います。中医協にいたときに「私は医師の代表ではなく、30以上の職種が働く病院の代表です」といいました。MSWは地域の医療・介護連携のキーパーソンです。医療安全と厚労省はいいますが臨床工学技士に1つも言及がない、こんなことでいいのかというのが私の立ち位置です。地域包括ケア病棟はこれからの地方創成の要と考えています。

 地域包括ケア病棟の機能はご存知のように、ポストアキュートとサブアキュート、在宅・生活復帰支援、そしてその他の機能がありますが、在宅・生活復帰支援では今まで日本のリハビリはPTやOT、STも歩行などの機能訓練ばかり行っていましたが、家に帰すことを目的としたPOCリハが大事だと思っています。郡市医師会や自治体、保健所、社会福祉協議会等を巻き込んだ地域内多職種協働も重要になります。

 その他の機能が使い勝手がよく、例えばレスパイト入院や糖尿病の重症化予防のための教育入院、がん化学療法の副作用への対応、また透析導入時の短期入院などにも使えます。

 地域包括ケア病棟の届出病床は直近で6万床を超えていますが、平成26年10月のときは2万5,000床ほどでした。私は回復期リハより使いやすいので最大・最強の病棟になるだろうと考えていましたが、予想どおり急速に伸びています。ただ少し心配なのは、先ほどから指摘されていますように自院からのポストアキュートの評価が今後どうなるかです。私は7対1の転換先になっていることから、今後2回くらいは報酬は下げられないだろうと考えています。

 地域包括ケア病棟の経緯は、前身の亜急性期病床から平成26年に創設されましたが、平成28年度の改定では包括範囲から手術、麻酔に係る費用が除外されました。ただ、それを行っているところはほとんどないようです。また、500床以上およびICU等を持つ病院は1病棟までと定められました。

 この改定の自治体病院における影響ですが、届出病床は1,438床から3,707床へ約2.6倍伸びました。指定都市や中核都市などではない「その他の地域」、地方都市が該当するかと思いますが、同地域で約3倍増加しているのも特徴です。

 届出病院数も公立では地域包括ケア病棟入院料1の131病院、入院医療管理料1の92病院を含め合計で230病院が地域包括ケア病床に転換しています。全体の14%を占めています。

 特定の機能を有する病棟における病床機能報告の取り扱いにおいて、地域包括ケア病棟は急性期機能、回復期機能、慢性期機能、いずれも選択することができます。このため逆に機能がわかりにくいといわれる所以です。

 回復期リハ病棟と比較しますと回復期も少し増えて7万床を超えていますが、地域包括ケア病棟が急増しており、いずれ回復期リハを超すのではないかといわれています。

 自治体病院で良い事例が2つありましたのでご紹介します。1つは砂川市立病院です。同院のある地域は医療資源がかなり不足しており、砂川市立病院が1病院で支えているようなところです。地理的には旭川と札幌の中間にある地域です。回復期も慢性期も十分ではなく、一方でDPC対策のために在院日数の短縮を進めざるを得ないのですが、そういうなかで住民から「すぐに病院を出される」「市立病院なのに置いてくれない」と不満の声が出るようになりました。

 そのため2014年診療報酬改定で地域包括ケア病棟が創設されたのに伴い、同病棟への転換を即断し、北海道の自治体病院としては初となる地域包括ケア病棟(44床)を開設しました。当時、一般病床で90日超えの入院患者が6%近くおり、亜急性期病床も満床という事情が背景にあります。

 課題はリハビリスタッフの確保で、また対象患者の洗い出しをどうするか。制度を理解していない職員もまだ多いそうです。従来型の病棟運営からどう脱却していくかということです。また、平均在院日数や医療・看護必要度などの各種指標のチェック体制の構築も必要です。高齢者等でリハビリが1日1単位しかできない人をどうするかも挙げています。

 もう1つは飛騨と美濃の境目くらいにある美濃市立美濃病院です。まず美濃市の老年人口が増加しているなかで美濃病院は市内で唯一病床を持っている医療機関です。人口の高齢化に伴い入院患者も高齢者が急増しています。経営状態もよくないなか、拡大する回復期~慢性期ニーズへの対応が求められ、この2つをどう両立するかが問われていました。入院患者の平均年齢は75歳を超えています。シミュレーションしたら、地域包括ケア病棟に転換したほうがいいのではないかということで亜急性期病床26床から地域包括ケア病床45床へ転換を図りました。その病棟転換による入院収益効率は+4.75%改善しています。

 次に中医協での議論とわれわれの要望です。届出病院は、民間が一番多いですが、国、公立、公的・組合を合わせると3割を超えています。患者の流れは自院からの7対1、10対1からの受け入れが多く、退棟先は自宅が6割ですが、うち在宅医療の提供なしが大部分を占めています。患者は骨折や外傷が最も多く、手術の実施は入棟前が21.3%、入棟中は3.5%で輸血関連がほとんどです。

 このような状況を踏まえて平成30年改定の要望について日病協では包括対象範囲の見直しを要望しています。また代表者会議での主な意見として挙げられていたのが、急性期リハの評価です。自院急性期からの患者は急性期リハをやらなければいけない患者も多いと思いますが、それを評価しないというのは困るということです。

 全国自治体病院協議会としては、データ提出加算2の点数が非常に少ないので現行の180点から230点くらいにしてほしいと要望しています。また、地域包括ケア病棟の機能によってはリハビリを必要としないところもありますので、リハビリスタッフの専従要件を専任に緩和していくことも求めています。また人工腎臓は包括外ですが、腹膜還流は包括されています。腹膜透析も増えていますので包括から外していただきたいと思います。そのほか退院時共同指導料2、介護支援連携指導料などの退院支援項目、病棟薬剤業務実施加算1や栄養サポートチーム加算などの加算点数も現状では包括されています。連携やチーム医療の推進といいながら包括されるのはいかがなものかと思いますので、出来高算定を要望しています。

 地域包括ケア病棟は、地域に絶対なくてはいけない病棟だと思います。ところが、地域包括ケア病棟は民間がやるべきで急性期医療は自治体病院といわれる方もおりますが、それは違います。地域住民が必要とするものを提供するのが地方の議会から委任されて地域医療を担っている自治体病院の仕事ではないか、というのが私の考えです。ありがとうございました。

 

〇高橋:先ほどお話されたような考え方もある一方で、もっと自治体病院が地域包括ケア病棟に流れ込んできてもいいという見方もあると思います。ただ公的病院でもまったく入ってこない病院もあります。その辺はどのようにお考えですか。

 

〇邉見:公的病院といいましても、地域差などもあり、先ほど紹介した砂川市立病院さんは他に医療を提供するところがないので導入されたと思います。同じような病院が数多くあるようなところは地域医療構想にしたがってやらなければなりません。それとまったくやらないようなところはがんセンターや心臓病センターなど専門病院が多いです。また、県立中央病院や政令指定都市にあるような自治体病院は民間病院にお任せするケースが多いと思います。

 

〇高橋:どうもありがとうございました。続きまして土井先生、お願いします。土井先生の発表は日病(日本病院会)の調査を使われた内容で、地域包括ケア病棟の評価と検証を行っています。先生のところは民間病院ですが、日病的な立場からお話いただけるということです。よろしくお願いします。

 

〇土井:ご紹介にありましたように日病の調査に私見を交えてお話いたします。私は日本病院会の元常任理事で長い間、中小病院委員長を務めていました。日病の紹介をしますと会員数は2,464病院で、民間65%、公的35%という構成です。DPC対象病院47%に対し出来高算定病院も53%あります。200床以上と未満の比率はちょうど半々です。日病というと公的で大病院の団体と思われがちですが、決してそんなことはありません。

 地域包括ケア病棟の役割としては皆さんお話されていますように、ポストアキュート、サブアキュート、在宅・生活復帰支援を柱に地域利用を支えていくということで、非常にすばらしいシステムだと思います。

 平成28年・29年度の診療報酬等に関する定期調査を日病で行いました。29年度分がまだ集計が終わっていないところがありますが、有効回答数は730病院、うち地域包括ケア病棟・病床の届出を行っている病院は218病院、29年度は284病院となっています。また届出を検討している病院は59病院、29年度は24病院あります。

 地域包括ケア病棟入院料/入院料管理料の集計ですが、28年度は入院料1が151病院で69.3%、29年度も入院料1が最も多く、この年度から一般病床と療養病床を分けて集計していまして、まず数が少ないのですが療養病床も63.6%が入院料1を算定しています。

 地域包括ケア病棟を検討している病院の現在の届出はやはり急性期が多く、今後の届出予定に関しては、これも地域包括ケア病棟入院料1が6割以上となっています。いずれにしても多くの病院が地域包括ケア病棟を検討しており、今後も増えていくことが見込まれています。

 開設主体別では国立が7.2%、自治体やその他公的が61.5%と多く、医療法人などの民間は31.1%です。届出を維持もしくは基準を取得するために厳しい要件が何かという調査では、在宅復帰率7割以上、一般病棟用の重症度、医療・看護必要度の該当患者割合10%以上が挙げられています。

 日病の調査ではありませんが、500床以上の病院も少ないですが地域包括ケア病棟の導入を進めていると聞いています。

 地域包括ケア病棟の導入事例を紹介していきます。まず、この後発表される宮田先生のところの相澤東病院です。相澤病院から分離して地域包括ケア病院をつくられましたけれど、入院元やはり今のところ相澤病院からの転院が86.3%となっています。

 現状の地域包括ケアシステムで高齢者は本当に在宅で暮らせるのかという問題があります。現実には老老や独居のなかでなかなか難しい。したがって街づくりをするなら、地域密着型の病院を中心に訪問看護ステーション、特養、サ高住、老人ホーム等を集めていく必要があります。もう1つは地域の人とともにその街を住みやすくするという発想が必要でないかと思います。

 新須磨病院は神戸という大都会で中小病院ながら急性期で頑張っている病院です。病床数は147床ですが、平均在院日数は10日、手術件数は2,300件です。福祉施設や訪問看護ステーションも有しています。同院では地域包括ケアシステムの成功の鍵として、高齢者にやさしい中小病院の役割は大きいと指摘しています。やはり中小病院が淘汰されていくのは寂しいので地域包括ケア病棟などを活用して地域包括ケアシステムの一翼を担う存在になれればいいと考えています。

 十勝地方にある清水赤十字病院の事例です。十勝地方は長野県くらいの大きさがありますが、本当に人がいません。医師は内科、外科、消化器など6名ほどですが、地域をすべてカバーしていくためには1人ひとりが内科、外科と言っていたら回らないそうで、地域医療科をつくって救急から訪問診療、人工透析などを全員で対応しています。

 そのなかで地域包括ケア病床を8床導入しましたが、従来病床より23%も増収となり、非常によかったとおっしゃっています。同院が他の中小病院や訪問・介護サービスをバックアップしていくことにより、まち自体が“地域総合病院”という概念で地域医療に取り組んでいるそうです。過疎の地域では皆が力を合わせていかないといけないということだろうと思います。

 私が院長を務める岡山旭東病院についても少し紹介します。当院の特徴は脳・神経・運動器の総合的専門病院ですが、平成27年12月に地域包括ケア病棟を開設しました。そのメリットは数多くありますが、1つはコメディカルのモチベーションが非常に高まり、地域とのつながりが非常に強くなったと感じています。地域包括ケア病棟への入院経路はやはり自院の急性期病棟からの転院が多い傾向にあります。しかしそれだけでは当病棟の本来の役割を果たしているとはいえないと思います。

 日病ではJHAstis(ジャスティス)という出来高算定病院経営支援事業を行っています。冒頭でご紹介しましたとおり日病の会員病院は出来高算定病院が多いんですね。そして、経営分析はどう行えばいいのか、他の病院と比べてどうか、加算算定率が低いといった悩みを抱えています。そこで株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンと業務提携し、経営改善に資する各種の主要な指標をレポート形式で配信しています。それによって病院の実態を把握して病院の方向性を決めるのですが、ある病院では地域包括ケア病棟を稼働させた結果、収益増につながるといったことも示されました。

 もう1つ、岡山県倉敷市には倉敷中央病院という地域でダントツの急性期病院があります。同院が中心になって今では他の医療機関、福祉施設、行政と連携して病気予防の啓発、健康維持のためのサポーターの養成なども行っています。年2回サポーターズミーティングも開催し、ここで勉強されたサポーターが病院のかかり方や地域医療への理解など地域に啓発していく役割を担っています。

 「自分の健康は自分で守ろう」ということですが、私もこれに参加して感銘を受け、自分のところでも「なかまちーずプロジェクト」というものを立ち上げました。目的は住民と専門職の協働による地域づくりです。そのコアメンバーには地域のほとんどの病院が入っていますし、施設や行政も参加しています。昨年はなかまちーずフェスティバルを開催しましたが、認知症啓発のための寸劇や子どもたちが楽しめるブースをつくって健康づくりへの啓発を図りました。当院のコメディカルが自発的に地域の関係者と顔見知りになり、協力して運営しています。

 あらためて地域包括ケア病棟は急性期から在宅まで地域全体で非常に大きな役割を果たしていると思います。同病棟の今後の役割としては、レスパイト入院、かかりつけ医との連携、訪問看護・リハ・介護との連携、前方連携・後方連携、救急隊との連携、また総合診療専門医の活躍の場でもあると思います。そのほかにも紹介しました地域住民との連携も重要です。いずれにしても地域密着型の機能が求められますので中小病院の出番でないかと考えています。

 また、現在はまだ麻酔・手術は少ないですが出来高ですので病院にとっても使いやすい病棟であり、その役割は地域のニーズに応じてそれぞれ異なってもよく、地域包括ケアシステムの要となると思います。ご清聴ありがとうございました。

 

〇高橋:後半は地域の話になり、地域包括ケア病棟の役割は非常に多様であるということをあらためて知りました。ここで座長を交替します。

 

〇池端:それでは後半の司会進行を進めます。実際に地域包括ケア病棟を運営されているお立場からお話いただくことになっています。まず相澤東病院の宮田先生にお願いします。土井先生からもお話がありましたように日本病院会の会長をされている相澤先生の相澤病院があえて病棟転換ではなく、新たに地域包括ケア病院をつくられて、宮田先生はそこでご活躍されています。なぜ地域包括ケア病院を新築されたのかを含めてご講演いただければと思います。よろしくお願いします。

〇宮田:松本医療圏は人口43万人、松本市が23万人というところになんと200床以上の急性期病院が7つもあり、急性期病院の激戦区としてそれぞれの病院がしのぎを削っていたのですが、現在は少し落ち着いています。信州大学がだいたい年間1万人強の入院患者がおり、相澤病院が8,500人くらいとなっています。松本市の人口の推移ですけども、2025年は高齢化率が30%になります。

 松本市は第6期介護保険時評計画・高齢者福祉計画として「安心・いきいきプラン松本」という計画を立て地域包括ケアの推進を試みているわけです。地域包括ケアシステムとは必要な医療・看護・介護・福祉サービスが一定の地域内でいつでも容易に提供される仕組みかと思います。

 適切な住居を確保し、看護・介護は家族から社会へというのが理想ですけれども、松本市ではまず適切な住居がまったく足りない状況です。決して市を批判しているわけではないのですが、「重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後までつづける」システムの構築にはまだまだ時間がかかると思います。

 相澤病院は地方都市の急性期病院ですが、数年前に同院の中長期方針が出ました。1つは7対1の堅持で重症度、医療・介護必要度25%以上を目指す。もう1つは今はⅢ群ですがベッド単価を上げてⅡ群病院にしていくということです。

 急性期病床は平均在院日数を短縮して稼働率を下げてでも急性期病院に特化していきたい。しかし、それを進めると退院後の生活への患者さんの不安が大きくなります。先ほどもお話がありましたが、地域からは「相澤病院はすぐに追い出される」と散々言われていました。それを解消するために回復期リハ病棟と地域包括ケア病棟をつくるということが画策されました。

 特に地域包括ケア病棟のほうは、急性期は終了したけれども回復期にも入れない、しかし自宅にはすぐに帰れない患者さんの受け皿をつくる必要性から計画されましたが、相澤病院は総合入院体制加算を算定しているため、地域包括ケア病棟は持てないという事情があります。そこで地域包括ケア病棟のみの病院を新設しようということになりました。

 ただし、どうせ別病院としてつくるのなら、松本市の地域包括ケアシステムに何らかのかたちで貢献していきたいと考えました。

 慈泉会グループとしての地域医療連携、言い換えれば相澤東病院が開設された背景ですが、相澤病院は24時間365日入院依頼を断らないという体制を敷いており、紹介(74.1%)と逆紹介(92%)を徹底しています。地域の開業されている先生方の95%が登録医となっています。また、訪問看護・訪問リハビリ・通所リハビリ・ケアマネ・ヘルパーなどの在宅機能を持つ相澤地域在宅医療支援センターをつくり、主治医であるかかりつけ医をサポートしています。

 そして居住系のサービスとしてサ高住2施設で約100室、そのほか関連の社会福祉法人で特養50床を運営しています。このなかでどうしても足りないのが、急性期病床から在宅医療への架け橋となる病院です。そのような経緯から地域包括ケア病棟のみの病院をつくりました。

 さて相澤東病院の仕様をどうするのか。当初は1.5次くらいの救急、小さな手術もやりたい、往診や訪問診療もしっかりと行いたい、臨床検査がいつでもできる体制など、いろいろと検討されましたが、そうすると小さな急性期病院をつくるようなかたちになるため断念し、地域の在宅療養患者をしっかり支援していく病院と位置づけにしました。イメージとしては有床診療所の外来機能に、少し救急病院的な要素を加味した病院にして、繰り返す高齢者の入院やレスパイト入院などに対応したい。

 そして、60日という時間がありますので多職種で生活能力の向上を図ったり、退院後のマネジメントもしっかり行う、また訪問診療や退院後訪問指導などで地域との交流を図っていくことを目指しました。一言で言えば、相澤病院や近隣の急性期病院のポストアキュート、地域からのサブアキュート、在宅医療支援が大きな柱になると思います。

 相澤東病院は平成28年2月の開院ですのでまだ1年半しか経っておりません。施設基準は在宅療養支援病院、42床がすべて地域包括ケア病床になります。医師は3名、看護師は20名です。

 入院患者の実績ですが、月々30~35人程度の新入院患者を受け入れています。平均在院日数は30~40日で推移。昨年6月から地域包括の2を算定し始め、今年3月に1をとることもできました。稼働率があまりにも高くてまったく空きのない状態です。緊急の入院に対応する余裕がないというのがかなり問題だと思います。

 先ほど土井先生からもご紹介いただきましたが、入院経路は相澤病院からが85.7%です。相澤病院と距離的に100mくらいしか離れていないため、こういうかたちにならざるを得ないところもあります。

 患者さんの年齢は85~89歳がピークで、疾患種別では慢性心不全、脳卒中、急性肺炎、悪性腫瘍、脊椎圧迫骨折などが多いです。在宅復帰率は最近はだいたい80%以上ですが、8月は在宅になかなか帰ってもらえないようで66%と低調でした。トータルでみれば70%以上はクリアしています。カンファレンスの件数を分析しますと、件数が多い月は在宅復帰率も高くなりますので、在宅に帰ってもらうためにはカンファレンスをしっかり行うことが重要かと思います。

 地域別入院患者の退院地域をみますと当初、中央の方は中央に8割程度帰るのに対し、南部の方が南部に帰る割合は45%しかいませんでした。一方、中央に戻る人が35%もいて松本市に住み着いてしまう傾向がみられました。

 ただ、半年分のデータを上乗せしていくと南部の方が南部に戻る割合は64%と改善されました。その理由の詳細は不明ですが、推測するとこの期間に在宅医療を積極的にされている先生方との病診連携の強化、また回復期や慢性期を持っている病院との病病連携の強化が奏功しているのではないかと考えます。

 一方、死亡退院率についてですが、平均すると15%前後出てしまいます。この数値が地域包括ケア病棟としていかがなものか。がんの終末期という患者さんだけでなく、老衰のように亡くなられる方もいまして、看護師の負担も大きいので今後この問題をどう捉えていくか検討していかなければならないと思います。

 お金の話で恐縮ですが、現在は月4,200万円くらいの収入で事業体単体としては赤が出ない程度に運営できているという状況です。一方、相澤病院は平均在院日数が10日を切り、稼働率は82%くらいです。患者数は増えているのですが、特に平均在院日数が2年前から一気に短縮しているという印象です。重症度、医療・看護必要度は以前はギリギリでしたが、今は30%以上で推移しています。

 これがすべて東病院の影響とは思いませんが、転院患者の選定にあたっては、DPC入院期間Ⅱ超え、重症度、医療・看護必要度、自宅退院は可能かなどの要素で両院のスタッフが週に1回集まって検討し選定しています。こうした活動により、今まで相澤病院の医師や看護師たちの病院経営や地域包括ケアに関する意識改革が進んだことは確かで、それが何よりの成果、賜物ではないかと考えています。

 地域全体でも地域包括ケア病床が増えており、ここ1年で104床から269床になりました。やはり地域包括ケア病床は大きな病院に集中せずに二次医療圏に平均的に分散して存在し、さらに地域内にある地域包括ケア病床同士が連携しあって地元に患者さんが帰れるにようにしていくのがよいと思います。

 最後に東病院が地域包括ケア病院としてのあるべき姿というとおこがましいのですが、急性期が終わった患者さんを本院からだけではなく、広く急性期病院から受け入れる、またサブアキュートの患者さんに対応していく。

 そして何よりも大事なのは、地域の患者さんを考えたときには直面する問題解決型のカンファレンスに加えて、中長期的なケアプランを立て、退院支援を行う必要があるのではないと考えています。ご清聴ありがとうございました。

 

〇池端:職員の意識改革が進んだということが非常に印象に残りました。いろいろご質問したいところですが、時間が押しておりますので、シンポジウムの最後にご質問させていただければと思います。続きましてこれから2題は療養病床とのケアミックスのなかでの地域包括ケア病棟ということでご発表いただきます。まず「10対1+療養病床から地域包括ケア病棟プラス療養病床への転換」ということで、下松中央病院の齋藤淳先生、お願いいたします。

 

〇齋藤:ご紹介いただきました齋藤と申します。下松中央病院はカテゴリーでいうと、100床未満の地域密着型の病院です。

 山口県は人口140万人で8つの二次医療圏があります。当院は人口14万人の周南市を中心とする周南二次医療圏にあり、人口は26万人です。高齢化率は30%、山間地域では40%に達しています。

 下松中央病院はもともと企業立病院で日立の下松工場の附属病院でした。その病院を平成25年に買収し、買収当時は年間1億5,000万円ほど赤字が出るというかなり厳しい状況でした。2つ病棟があり、両方とも10対1だったのですが、半分は稼働していないため、そのうちの1つを25対1の医療療養病床に転換しました。

 ただ、経営が厳しい状況は変わらず、平成27年に系列の鹿野博愛病院の介護療養病床36床を当院に移動して医療療養病床に転換し、10対1の一般病床と医療療養病床2棟というオペレーションで再建を図りました。当初、持ってきた介護療養を地域包括ケア病棟にしようと考えたのですが、人員や医療レベルの問題などを考慮して、平成28年、一般病床を廃止して地域包括ケア病床に転換しました。その際、医療療養病床の1つは20対1にして在宅復帰機能強化加算の病棟にしています。

 地域包括ケア病棟の入退院についてです。在宅からの入院が約60%、ポストアキュートが19%、関連施設から14%、サブアキュートという大きな括りでみると8割くらいが外来から入ってきています。退院も過半数は在宅へ戻り、関連施設等を含めますと在宅復帰率80%は確保しています。自院の療養病床への転棟は2割弱になります。

 医療療養病床のほうも付け加えておきます。医療療養の入院は地域包括ケア病棟からの転棟が8割、他の急性期病院から入院する割合も1割ほどあります。退院はやはり死亡が多いのですが、それ以外は在宅、関連施設で半々となっています。

 診療報酬の単価をみてみますと、地域包括ケア病棟は平成27年度から28年度にかけて11%ほど伸びています。当院は整形外科がありますので手術が多く、28年度から手術が出来高になりましたのでその分だけ単価が増えたと分析しています。

 地域包括ケア病棟になることによって平均在院日数は20日から23日になり、稼働率も9割弱まで上昇しています。単価が11%、さらに稼働率も増えましたので地域包括ケア病棟では診療報酬が15%ほど伸びています。一般病床のころは稼働率に波があり、それによって収入も不安定でしたが、地域包括ケア病棟に転換したことにより、稼働率に波がなくなって診療報酬を安定的に得ることが可能になりました。

 当院は歯科や健診、外来診療も行っていますが、それらの収入はほとんど変わらず、入院診療分だけ診療報酬が増えている状況です。

 リハビリは包括になりますので収入は半分になりました。手術数は月10件未満程度で、骨折観血的手術、骨内異物除去、人工骨頭挿入術が多数を占めています。

 疾患別の入院患者の内訳は、内科系が67%、整形が28%。地域包括ケア病棟は疾患の制限がないのが一番、ありがたいところだと思います。高齢者の骨折や手術にならない症例でも受け入れられるので非常に助かっています。

 機能区分ごとの医療需要分析をしてみますと、高度急性期と急性期で14.3%、回復期39.3%、慢性期45.3%という結果でした。これをみますと回復期と慢性期で急性期をみているという現状が反映されていると思います。

 まとめに入りますが、入院患者層は変わっていません。外来からが60%、ポストアキュート、つまり他施設からの紹介が20%です。平均在院日数は20日から23日に伸びましたが、単価の増加と稼働率向上で地域包括ケア病棟の診療報酬は25%増加しました。療養病床は在宅復帰強化型になることで地域包括ケア病棟後の受け皿として機能しています。以上です。ありがとうございました。

 

〇池端:地域包括ケア病棟と在宅復帰強化型の療養病床の組み合わせがWin-Winの関係になっていると感じました。このタイプの病院は手術が出来高になったことで地域包括ケア病棟の収入が安定したというご発表だったと思います。ありがとうございました。

 最後は「小規模在宅療養支援病院の地域包括ケア病床の活用」をテーマに、佐賀県にあります志田病院の志田知之先生にご発表いただきます。在宅療養支援病院を中心として地域包括ケア病床を運営され、新たにケア病棟を新築されることも計画していると聞いております。よろしくお願いします。

 

〇志田:当院は皆さんの病院と比べると1病棟分しかない、48床の小さな病院で、そのなかで地域包括ケア病床の運営を始めました。小規模の病院ですので外来は普通の診療所的なかたちで1日140人くらいが通院しています。また以前から訪問診療を積極的に行っており、在宅療養支援病院として在宅時医学総合管理料は45件、訪問診療は月120件ほど行っています。

 入院は48床を2病棟に分けて運営しており、1つは回復期リハビリテーション病棟入院料2が28床、もう1つは地域包括ケア病棟入院医療管理料1が12床と療養病棟入院基本料1(在宅復帰機能強化型加算)が8床の病棟です。併設施設はグループホームをはじめ、介護保険事業はそれぞれ小規模ですがいろいろと行っています。

 職員数は常勤医師が5名しかおりません。職員の構成で特徴的なのは、回復期リハを運営していますのでセラピストが35人ほどいまして、あとMSWが5人、システムエンジニアも3人います。

 私が理事長になった後の平成15年に2床増やして現在の48床になっていますが、この病床を常に有効活用していくというスタンスでこれまでも9回くらい病床の構成を変えてきました。平成19年から回復期リハを開始し、平成22年から在宅療養支援病院に認可されています。

 当院のある南部医療圏には地域包括ケア病床を運営する病院が6施設ありますが、いずれも管理料で10床前後のケア病床を運営しています。医療圏全体は病床過剰地域ですが、鹿島市より南の地域は非常に病床が少ないということと、病院規模も100床未満が3分の2ある、小規模な病院が乱立した地域となっています。

 地域包括ケア病床をつくった経緯ですが、平成26年に同病棟が創設されてからすぐプロジェクトを立ち上げました。同年9月には予定している病棟の看護配置を13対1に変更し、12月にはデータ提出加算を届け出まして、夜勤看護師の2人体制も始めています。翌27年1月から当時18床だった療養病床のうちの8床を地域包括ケア病床に転換。平成28年4月に回復期リハ病棟を30床から28床に減らしたのに伴い、療養病棟を地域包括ケア病床12床、療養病床8床に変更しました。このときから当院ではこの病棟を地域包括ケア病棟と呼んでいます。

 入院患者数の推移を示します。自分でも少し驚いているのですが、平成25年、26年の病院全体の入院は200人くらいだったのですが、27年は290人、28年は350人と1.75倍に増えました。忙しくなるはずだなあと思った次第です。病床稼働率も回復期リハと地域包括ケアは9割以上で推移しています。

 当院の地域包括ケア病床の入院種別は、サブアキュートが約7割、ポストアキュートが3割という構成です。その他はわずかですがレスパイト入院、検査入院などです。

 サブアキュートの疾患ですが、肺炎、尿路感染、心不全増悪が多くを占めていました。ポストアキュートの入院目的はリハビリが7割、緩和ケア・療養が3割です。在宅医療を行っていますので、看取りのために地域包括ケア病床を利用するケースが多いと思います。

 入院元は自宅と居住系介護施設を合わせると7割近くになり、退院先も自宅等が7割超となっています。他の急性期病院からの入院は23%でした。参考までに回復期リハ病棟は急性期病院からの入院が約9割を占めています。

 在宅復帰率は回復期リハと地域包括ケア病床が9割を超えていますが、療養は76%にとどまっています。

 地域包括ケア病床の平均在院日数は特にサブアキュートが短く、平均で21.3日です。うち1週間以内で退院される方が16.6%、2週間以内が46.6%います。ポストアキュートのほうは少し長くなり、リハビリの方は1カ月ほどとなっています。入院の総収入は平成25年と昨年を比べると5,000万円近くの増収という状況です。

 在宅療養支援病院において地域包括ケア病床は非常に使い勝手のよい病床です。小規模病院であっても自院に合った病院運営をすることで地域での役割を果たすことができます。しかし、病床の少ない病院のベッドの効率的な利用は実際、非常に大変です。冒頭、当院にはシステムエンジニアが数名いると紹介しましたが、当院独自の病床コントロールシステムを構築・運用しており、あとはMSWの活躍によって高回転で有効活用しています。今後もITを活用しながら、地域の他医療機関と良好な連携を図り、地域での当院の役割を果たしていきたいと考えています。

 先ほど座長のほうから紹介いただきましたが、当院から100mも離れていない44床の療養病院が当院と統合したいと話になってきまして、先月末に地域医療構想会議の分科会で報告いたしました。

 経緯としましては、当院北側の隣接地に市営住宅跡地があり、鹿島市から売却の提案がありました。その敷地を利用して有料老人ホームを当院に連結したかたちで建てたいという計画を進めていました。その矢先に先ほどご紹介した病院が閉院するという話を知り、7月初めに第三者を通じて当院が交渉の可能性があるということを初めて知りまして、8月下旬に当事者間で経営譲渡の同意が成立しました。

 今後の予定としては、10月末にその病院の経営を当法人が譲り受けるとなっています。経営移譲後は44床を32床に縮小して、最終的には先ほどの隣接敷地に新病棟を建設し、機能を統合していく計画です。統合後の機能は地域医療構想に則って「回復期」機能を中心とし、全病床80床にして、回復期リハ32床、地域包括ケア病棟28床、療養病床20床に再編していく予定です。

 まとめとしましては、当地域に不足している「回復期」機能の病床を増やし、急性期からの受け皿機能や「在宅療養支援病院」として在宅患者の急性増悪時の受け入れ機能を拡充していきます。また、鹿島市以南では実質的に不足している「慢性期」病床を一定数存続し、これらにより地域内の医療連携が円滑にできるよう、病棟機能を明確化していく方針です。以上で終わります。

 

〇池端:ありがとうございました。行政の後押しを受け、地域医療構想に沿ってスピード感をもって進めていらっしゃると思います。淡々とお話されていますが、結構大変な思いをされているのではないでしょうか。また統合後、お話が聞ければと思います。残り20分弱ですが、シンポジウムを進めたいと思います。

 

〇高橋:今回のお話を聞いて地域包括ケア病棟は想像以上に幅がある。7対1からの入院というポストアキュートに特化したような病院から、地域に密着してまちづくりまで首を突っ込んでいるケースもあり、これらがまさに地域包括ケア病棟の特徴かなと思います。また、今回は検証がテーマですので、良いところは伸ばしていければよいのですが、悪いところはどう対応していくかが重要になってきます。そこで各先生、まず自分たちの地域包括ケア病棟が座標軸のどの辺にあるか、それと転換してみて良かったところや課題、そして今後どういう方向に向かっていくべきか。評価という視点でお1人ずつ手短にお話いただけますか。

 

〇仲井:当院はHCU(ハイケアユニット)と7対1があるところに、地域包括ケア病棟と障害者病棟や療養病床などの慢性期がある急性期ケアミックス型の病院です。地域包括ケア病棟は2病棟ありますので、自院の7対1だけでなく、比較的地域からの受け入れも多く、院外からのポストアキュートは当初3%でしたが今は単月で15%に近づいています。自分としては地域包括ケア病棟をやってよかった、逆にそうしていかないと自分たちも地域も困っていたと思います。

〇邉見:赤穂市民病院は昨年12月から地域包括ケア病棟の運営を開始しています。私は名誉院長ですので実権がありません。もう少し早く導入してほしかったのですが、現状は少し病床稼働率が低く、苦戦していると今の院長から聞いています。

 

〇土井:当院は202床ですが、近隣に40床の病院がありましてそこが経営的に難しくなったため、私たちの病院に取り込んだのです。40床すべて7対1の急性期でスタートしたのですが稼働率が非常に悪い。そのため院内でいろいろと議論して地域包括ケア病棟への転換を決めました。それは経営的に非常に良い判断だったと思います。また、地域密着という意味では職員が非常に元気になったということです。リハスタッフやMSWがどんどん地域に出ていくようになりました。地域の医療介護関係者や行政とのつながりも深まったと思います。

 

〇高橋:土井先生のところの地域包括ケア病棟は自院からの受け入れは何割くらいですか。

 

〇土井:80%くらいですが、レスパイトなどの入院もありますので今後さらにサブアキュートのところを伸ばしていければと思います。

 

〇宮田:結論からいうと、地域包括ケア病棟をやってよかったなと思います。やはり急性期の在院日数短縮について不満を抱く患者さんも少なくありませんので、その辺のところが少しは改善できたと思います。今後は自院以外のポストアキュートとサブアキュートの患者を受け入れていきたい。現状はほぼ満床ですので、来年度末に12床増床する計画です。また、医師会との調整で難しいところはありますが、もう少し地域に出ていきたいと考えています。

 

〇齋藤:立ち位置という観点から申しますと、サブアキュートがメインになり、また10対1がありますので地域密着型に位置づけられるのではないかと思います。本日お話を聞いていて、本当にいろいろな運営のやり方があると感じました。当グループは今日お話した以外に2つの病院を運営しており、そこの病院でも地域包括ケア病床が使えないかと検討しているところです。

 

〇高橋:亜急性期病床をつくる際のわれわれの基本調査によると、ポストアキュート型よりもサブアキュート型のほうが、1万円くらい点数が高かったのですが、コスト的にも高くつくのではないか、サブアキュート型をもう少し手厚くしないと経営的に厳しいのではないかと分析したことがあります。先生のところはサブアキュート中心ですが、採算的にいかがでしょうか。

 

〇齋藤:転換する前の収入がもともと低かったこともあり、収入的には増えています。しかし稼働率の良い病床を転換したとしたら、それほど大きな経営的なメリットはないのではないかと思います。

 

〇志田:療養病床から地域包括ケア病床に転換して本当によかったと思います。もともと在宅の患者さんの急性増悪を受けていましたので、それらの患者さんを地域包括ケア病床に移行できたことで基本的には収入も増え、非常に助かっています。

 

〇高橋:医療提供側からみても非常に使いやすい病床ですし、まちづくりという地域包括ケアシステムで目指すべき方向性からみても非常にフィットしているということが、皆さんのお話からみえてきたと思います。フロアのほうからの何か質問ございますか。

 

〇質問:障害者病棟と一般の93床の病院を運営しています。仲井先生にお伺いしたいのですが、当院ではポストアキュートが非常に多く、そのなかで人工呼吸器のような患者さんもおりまして、どうしても地域包括ケア病棟の60日がネックとなりますが、例外的にこの60日を超えるような扱いになる可能性はないでしょうか。

 

〇仲井:今のところはそういう話は出ていません。障害者病棟はすべて出来高ですから、60日超えの患者さんは障害者病棟のほうがいいのではないかという話もあります。もう1つ、障害者病棟のなかに地域包括ケア病床をつくることもできます。

 

〇質問:急性期の病院に勤めています。サブアキュートでどのような疾患かわからないけれども地域に住んでいる方々を受け入れる機能を地域包括ケア病棟で持つとすれば、現行の人員で十分カバーできるのでしょうか。何が起こっているかわからない人たちへの対応はER等もそうですが、結構マンパワーが要ると思うのですが。それを地域包括ケア病棟が担うとしたら何が必要なのか、お伺いできればと思います。

 

〇志田:基本的に高齢の方が多く、当院も直で入院を受けているケースは80代が一番多い状況です。もともと、かかりつけであったり、在宅で診ていたりした人を受けていますので、信頼関係があるなかでもっと高次の医療機関に送るかどうかはご家族と相談しながら判断しています。もちろん運ばれてくるときの疾患は多様ですが、当院では今以上に高額な医療機器を備えるようなことは予定していませんし、専門医を増やすこともできません。われわれができる範囲をしっかり説明しながら、やれる治療を頑張るということしかできないと考えています。

 

〇齋藤:私も急性期病院とのコミュニケーションだと思います。当二次医療圏には急性期病院が1つしかなく、そこと回復期や慢性期を含めた連携が非常に重要になっています。

 

〇高橋:救命の場合、患者さんの状態をみて結構振り分けているのではないかと思いますが、その辺はどうですか。

 

〇齋藤:急性期病院がER化していまして、断らないで受け入れるというスタンスで運営していますので、非常に助かっています。

 

〇質問:ということは、やはり地域包括ケア病床のサブアキュートは、在宅患者さんなど地域で把握できている方たちを受け入れる意味あいが強いのかなと思いますが、いかがでしょうか。

 

〇邉見:今の診療報酬は後方連携、退院支援に偏りすぎている。退院してから再び入院してくるまでの支援のしくみを国全体でつくらないと、3次救急にそういう患者さんが運ばれてしまうというムダが多くなってしまうと思います。

 

〇仲井:病院がどういう機能か、また地域包括ケア病棟がどういう機能かはそれぞれで違います。例えば当院ですと一般の救急は7対1へ、そうでない高齢者の急性増悪の方などは地域包括ケア病棟へと主に受け入れ、なかでも重症の方はHCU(ハイケアユニット)や7対1で受ける。それは病院の方針によって異なってくるのではないかと思います。高橋先生が指摘されましたけれども、救急隊がある程度トリアージしている場合もあります。

 

〇質問:齋藤先生と志田先生にお伺いします。まさに療養と地域包括のコラボということで今のところ経営的には安定しているとのことですが、地域包括から療養病床へ行く場合もあります。ただ、在宅復帰型だから療養病床へ行けるというのを問題視する意見もあります。療養病床のあとに在宅に復帰できればいいのですが、かなり困難な人が集まってしまっています。

一方で、急性期から療養病床の在宅復帰型に送られてくる患者さんも絞りに絞って送られているということで、在宅復帰を目的とした療養病床のなかにかなり在宅復帰が困難な方が集まり、しかもそれが医療的な困難ではなく、介護や家庭の状況などが原因となっています。その辺はどのようにお考えでしょうか。

 

〇齋藤:幸い私たちのところは社会福祉法人がグループ内にあり、そこで運営している施設を使っています。ただ、昨年も医療療養をつくりましたが、在宅復帰機能は強化していく必要があると考えています。

 

〇志田:当院はそもそも療養病床が8床しかないので、本当に退院先がなく困った状態です。結局、それでも帰さないといけないので、隣町の介護病棟を持つ病院へ移っていただく、あるいは特養のショートステイで対応していくなどが実情です。そういうこともあって住まいの機能が必要になり、敷地内に老人ホームの建設を計画したという状況です。

 

〇高橋:シンポジストの先生方、ありがとうございます。今回のシンポジウムは「検証」でしたが、仲井先生が会長を務める地域包括ケア病棟協会がずいぶん調査をされ、結構見えている病棟になっている。会長自ら分析して「見える化」している賜物ですが、非常に使い勝手のよい病院であるということがおわかりいただけたのではないでしょうか。これから高齢化が進み、生産者人口が減っていくというなかで、病院が地域に出ていく、さらにはまちづくりにまで携わるというヒントが盛り込まれていると思います。大雑把に言いますとこの病棟は将来的に、少なくとも10年くらいは明るいのではないかとポジティブに捉えています。それではシンポジウムを終わります。ありがとうございました。

 

(了)

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