日本長期急性期病床(LTAC)研究会 第3回研究大会 開催報告

《シンポジストプレゼンテーション》
これからの地域医療連携
座長:池端幸彦(池端病院理事長)
シンポジスト:早坂由美子(北里大学病院トータルサポートセンターSW 課長補佐)
シンポジスト:佐野晴美様(JCHO 横浜中央病院地域ケアサービスセンター医療福祉相談室長)
シンポジスト:小澤陽子様(松谷病院地域包括ケア本部本部長)

〇池端幸彦座長
  シンポジウムを開催する。まず、シンポジストプレゼンテーション。井川先生の基調講演を受け、現場で実際に医療ソーシャルワーカーとして連携をしている3人にご登壇いただく。急性期、地域包括期、慢性期、それぞれのお立場からお話ししていただく。
  急性期の立場で北里大学の早坂由美子先生に登壇いただく。紹介は省略するが、日本医療社会福祉協会の会長も兼任され活躍中である。では早坂先生、講演をお願いしたい。

〇早坂由美子
  よろしくお願いいたします。北里大学病院のソーシャルワーカーの早坂と申します。
  当院について簡単に紹介すると、北里大学病院は神奈川県相模原市にある。神奈川県は人口に対するベッド数が日本で一番少ない県である。相模原市はこれから高齢化が急速に進むと言われている。人口が72万人で、その中の大学病院であるが、特徴的なのは外来患者が1日3500人いるということ。なぜこんなに大学病院に外来患者が多いのかというと、一般病院が少ないからだ。大学病院が1000床あって、同系列の北里大学東病院が300床あるが、それ以外に400床以上の病院が二つしかない。それ以外は全て200床以下である。
  今日の話はベッドが足りない、急性期が少ないという病院で働いているソーシャルワーカーの視点からということで聞いていただきたいと思う。
  ちなみに北里大学東病院でDPCから下りたのだが、その理由は。去年5月にオープンした大学病院に、急性期機能を一気にまとめ、東病院はいわゆる地域包括ケア的というか、中間的な機能の病院として10対1看護にした。具体的にはもともとあった精神科や、神経難病に加え在宅緩和ケア、回復期リハ、小児在宅支援病棟と、いろいろな病棟を大学病院で作ったという状況である。
  ソーシャルワーカーが連携をする病床に関してだが、ソーシャルワーカーの視点からどの辺りが問題かという事と、患者が自己負担をいくらくらいするかについて話をしたい。一般病床はどこの病院も在院日数が関係するので、救急の病院から転院する時にもう一つその先の療養先のめどが立っていないと受けてもらいにくいという特徴がある。
  医療費に関しては後期高齢者で1割の方でオムツがある方の例だと医療費の上限額が44400円、食事代、自己負担金、オムツ代が30000円で、約10万円弱というのが患者が1カ月に負担する額である。回復期リハ病棟では疾病の制限や入院までの期間の制限があり、脳血管疾患は2カ月以内に人工関節置換後は1カ月以内に転院しなければならない。入院前の期間が限られているということで時間が結構たってからリハビリが必要と思われる方が行けないという使いにくさがある。
  費用に関してはまちまちで、今回は発表のために調べたところほとんど同じというところがないくらいであった。大体先ほどの10万円弱に加え、主にリース代、室料差額、日用品代と名目はいろいろであるが、結局、私費分が0円から9万円と随分違い、約10万円の差がある。1カ月に10万円から20万円くらいが、病院が少ない神奈川県のこの地域ではかかるというのが実情である。
  療養病床に急性期からうつる際、透析が困難な要因の一つである。また大学病院を市民病院のように利用する患者が多い関係で、何か一つの疾患に関して大学病院でかからないといけない状態だと他の診療科も大学病院でということが多い。内科でも特殊な薬を使っている方や何種類もの薬を使っている方、そういう方が療養病床に行きにくいという現状がある。また精神疾患を持つ方、認知症の症状がある方の入院も難しい。費用もまちまちで、感覚として15万、18万、20万円。大体18万から20万円くらいは1カ月にかかる患者が負担する額となっている。
  地方の病院のワーカーに聞くと療養病床が一番安いというので、患者にとっての医療費負担にも地域差があるのが現状ではないかと思われる。
  療養病床の場合、一番苦しいのは医療区分の1の方である。病院の打診をする時、療養病床に聞く時には開口一番、この方は医療区分に該当しないという事からはじめるくらい、医療区分2、3に該当していればいいが、該当していない方は難しい。吸引が8回以上、糖尿病の検査をするとか、何とか2にする場合もあるが、基本的に1の方の転院がしにくい。
  結局、医療区分1は介護保険の療養施設に行くべきだという考えだと思うが、寝たきりの方、ガンで疼痛がない方、腹水の穿刺をしている方や人工肛門の方、あるいは心不全、透析をしないと決めた腎不全の方、糖尿病で認知症がありインスリンの自己管理ができない方などで、医療区分1で医療の必要はない、介護だと言われると苦しい。やはり医療と介護のはざまの方がいるというのが現状だと思われる。
  典型的な例として、要介護度としては5なのだけれど、寝たきりの方。そういう方たちが行く場所がない。老健は判定会があったり、特養の場合は患者に会いに来てくださるとかそういうプロセスがある。これからの住まいなので必要だとは思うが、それで判定会に1週間待つというのが急性期の病院にとっては苦しいところがあり、その面で直接介護保険系の施設にいくのが難しい場合もある。
  そうなると、有料老人ホームやサービス付高齢者住宅が出てくる。首都圏は週に2、3件、営業の人がパンフレットを持って「うちのホームへどうぞ、いつでもお受けできます」と言って営業にくる。そういうペースで来られると、本当にファイルしきれない、管理のしきれないほどになり、箱を何個作っても入らないくらいの状況である。
  有料老人ホームはサービスが自分のところで持っているという事で信頼性も高いというか紹介しやすいが、経済的に高く、余裕がないと選べないという特徴がある。サ高住が安くなっていて、15万、20万という負担しやすい設定、これに介護料と医療費が付くので実質は20万円。最近は20万円いかないところもどんどん出てきている状況である。「いつでもどうぞ」と言ってくれるのはありがたいが、そういう所は患者の状態の相談ができる相手がいない。営業の方にはわからない。インスリンを何時までに打ってもらえるのかとか、毎日、傷の消毒が必要であるがやってくれるかというのを誰に聞いたらいいのかなどである。
  実際に住まいなので相談できないのは当たり前かもしれないが、やはり紹介していいのかと悩ましいところがある。首都圏でもっと都会の所でメディカル・サ高住のような形で医療機関と併設している所ができてきているが、相模原はまだそこまで多くないので、サ高住を紹介する時には悩ましいところがあるというのが現状である。
  円滑な転院について。まず阻害要因としてキーパーソンがいない事。お金がない。何か家族的な、あるいは社会的な問題を持っている方が移りづらい。医学的な問題としては薬であり、複数だったり、高額だったりすると移りづらい。
  今、一人の患者がいて、多剤耐性菌の方で在宅に行った時のデイサービスも使えず、転院あるいは退院ができないという方が一人いる。多剤耐性菌は転院しにくい。また仕組の問題として、大学病院に療養や回復期リハなどほかの病院からかかりにくいという問題がある。回復期リハの入院の日数制限が何とか長くならないかという事と、どうしてもどの医療機関もその先の在宅を見ての入院というのを考えているので、その先に医療依存度の高い患者に在宅が生活できる体制が整う事が大事であるが、それが不十分である。そして若い方の入院先がない。
  診療体制のギャップ。このあたりは大学病院の医師が療養の病床のことを知らないので薬を整理するとかをあえて言っていかないとやってもらえない。また在院日数が短い中で先方へ行くので、調子が悪くなったらいつでも引き受けますという一言を言ってくれればよいが、言ってくれる診療科と言ってくれない診療科がある。そのようなコミュニケーションの少なさも問題かと思われる。
  最後に患者や家族がそういう地域の限られた資源の中で医療を受けていくこと、その中で自分たちがどう生きていくという事を十分に理解していないし、こちら側から言えば十分に説明しきれていないということがある。その問題に対してどう対応するかが一つの課題である。社会・家族的問題に関しては一つ一つケースごとに違うので、ソーシャルワーカーとしては、個別に合わせてとにかく手間と時間をかけて対応していくしかない。
  遠方に親族がいればその人を何とか離さないようにかかわり続けることをお願いしたり、多少遠くても転院先に安い所を探すとか、家族に折り合ってもらうなど、さまざまな事を、ソーシャルワーカーはやっている。ソーシャルワーカーが居ない所では是非雇っていただきたいと思っている。
  医学的問題に関しては医師同士が顔を合わせて、今までの話にもあったが、直接話してほしいと思う場面が多い。そうすると話が早く決まる事がある。あとで紹介するが、北里はテレビ会議のシステムを使い、それをトライアル的に実施している。
  その仕組の問題への対応について、これからは地域包括ケア病棟が鍵だと思っている。ただ私の話の中に出てきていないのは、相模原市には地域包括ケア病棟がある病院が二つあり、一つは自分の病院の中でしか受けないという所。もう一つは外科の医師しかいないため、内科の疾患は診られない。
  結局、今、北里から市内の地域包括ケア病棟に行ける病院はないというのが現状である。市外にはあるので、使っているが、一番使いやすいのはケアミックスである。一般があって地域包括ケアがあって療養がある所が一番使いやすい。それは患者が緊急入院する前、1週間から10日間、家で大変な生活をしていて、這ってトイレに行っていたという方に1週間くらいの入院期間で次の病院に行くが、「いずれは家に帰る事を考えるか」と聞いても「とてもあんな生活はできない」という答えになってしまい、なかなかその先というのが考えられないのが現実である。やはり病気を受け止め、生活を立て直すには一定の期間が要ると思われるので、地域包括ケア病棟のようなところにいったん行けて、そこで家族もいろいろ考え、英気を養って次ということにできることが必要かと思われる。
  転院のその先の在宅療養環境作り、ここがつながっている事が望ましく、ケアミックスと言ったのは、状態が重ければ一般に行けるし、家に連れて帰らなければ療養があるみたいな形、そういう地域包括ケア病棟でこれからの方向性が考えられるような機能を持っているところが一番急性期としてお願いしやすいと思っている。
  医療と介護の機関同士でのコミュニケーション。最後に患者や家族がこれからどうして生きていきたいのかというのをきちんと考えてもらうような働きかけをしないといけないと思われる。昨年、厚労省であった人生の最終段階の医療体制整備事業の報告書の中に相談で一番多かった内容は「どこで療養できるか、するのか。」という事だった。自分の人生の最終段階の生き方について考える時、どうしてもどこで生活ができるかという療養の場所の話というのを抜きには話せないのが実際だと思う。ここはソーシャルワーカーの活動についての話であるが、ソーシャルワーカーがどの機能の病院にもいて、連携を取り合う事ができると、入院と在宅がスムーズになる。それらの実践を地域の問題として明確にし、市町村や行政の会議の中で伝えていくことが可能になると、ソーシャルワーカーが生かされると思っている。
  最後にテレビ会議について。相模原と町田というと、神奈川県と東京都であるが、このように県をまたいでいくつかの医療機関、介護保険事業者で介護医療圏インフラ整備コンソーシアムを立ち上げた。在宅療養に必要な介護に関するさまざまな研修を、テレビ会議を使って実施している。このようにグループワークをしているが、テレビ会議を使う事で参加者がこれだけ増え、延べ2000人いる。内容は排泄のこと、ヘルパーの医療行為のことなど、ヘルパーが困っている事を中心に研修会をやる事で人気がある。吸引研修もこのように行っている。
  まとめとしては、急性期の最初からいずれは地域に患者が帰ってくるところに視点を持ってその流れを考えながら支援をしていく事が大事なことだと思っている。ご清聴、感謝する。

〇佐野晴美
  当機構は昨年4月に旧社会保険病院、厚生年金病院、船員保険病院の三つから構成され発足した。地域包括ケアの要を使命とされている。全国に57カ所の病院と老人保健施設26カ所を持っている。その中の一つが私の勤める横浜中央病院である。神奈川県横浜市の中区に位置しており、当院の患者が非常に多い区である中区、南区、西区には、合計32万2千人の地域住民がいる。スライドに示す医療機関がこの3区に設置されている。
  当院の地域環境はやや特殊で、三方を観光地に囲まれている。ただ病院の目の前は日本三大簡易宿泊所地区の寿地区に囲まれている。寿地区昔、道路の真ん中で大きなドラムで火をたいて裸の人たちが酒盛りをしている所で絶対に行くなと、女性一人では行ってはいけないと言われていた地域であるが、少し高齢化になりおとなしくなってきている。部屋が3畳一間でテレビがあって布団を敷いたら終わりという所である。それから山の手のほうは高級住宅地が立ち並び、それを越えた下町は高齢者が非常に多い町である。
  横浜市高齢単身世帯割合を表しているもので、当院の患者数が多いところには、一番単身高齢世帯割合が高い南区が含まれている。
  横浜中央病院は一般急性期7対1が200床、地域包括ケア病棟50床の二次救急の拠点病院である。患者は地域特性の影響を受けているところがあり、もともと生活課題に問題がある上に病気やけがや障害が加わることで、さらにそれらの問題が重篤化している事が特徴で、家に帰りづらい人たちが多くなってきている。治療するだけでは退院できない。これは言うまでもなくそうである。
  そのため医療ソーシャルワーカーの援助が必要で、さらに時間もかかっている状況である。そこで治療と並行した生活再構築が必要だと考え、当院では21年度より取り組みをはじめている。退院困難患者にスクリーニングをかけ、早期介入を医療ソーシャルワーカーがする事と、その人たちの全体像を、医師を始め看護師、看護師、理学療法士、作業療法士、栄養士、医療ソーシャルワーカーで話し合いながら、いつのタイミングでどの職種が関わっていくのか、医師はどの段階でここの生活について考えてほしいという事を言うのか、その時にソーシャルワーカーが同席するのかどうかを常にこのカンファレンスで話し合っていくようになった。
  平成24年頃からは治療をするだけではなく、生活の立て直しまでをして家に帰ってもらう、それがうちの病院の全体のモットーとなってきている。いわゆる退院支援となってくる。退院支援ではソーシャルワーカーが患者や家族の意思や希望を聴き、ニーズを把握し、院内チームでそれを共有し、支えようとする協働が必要だと思っている。そしてそのニーズが実現できるよう、地域とのネットワーク作りを行うことも重要だと考えている。しかし急性期の病院としてはこのように両方のバランスを取る事が常に求められている。
  そこで昨年の改定で地域包括ケア病棟ができたことは私たちの労力がやや削減されたと言える。しかし、在宅復帰率のおまけというか、課題も含まれている。
  ここで当院の地域包括ケア病棟について話をしたい。50床あり、1病棟をつぶして7対1から地域包括ケア病棟に並行しているが、一応全科が対象でポストアキュート、サブアキュートの患者も何科の患者で何科の医師が見たらいいのかと、わからないような症状を言う方が非常に多い。
  そこで総合診療科を立ち上げ、科の専門家の医師はいないが、各科の部長が診療区に属するということで、持ち回りで患者を見ていくというシステムを立ち上げている。
  当院の受入基準としては在宅や施設等の療養生活の継続を目指す方を対象としている。昨年の7月に設置したので1年たったところでの実績を言うと、入院期間60日以内という要件が出るが、平均在院日数は1年間で25.3日。在宅復帰率が76%とぎりぎりのところである。
  リハビリ単位は2.46単位で、理学療法士や作業療法士によるリハビリという介入もやっているが、理学療法士と看護師が協力しあって生活リハビリということで、看護師がちょっとした動作の中でもリハビリを行って継続していくという事もやっている。重症患者の重症度・医療・看護必要度であるが、10%以上あればいいと言われており、当院は37%と非常に高い。この37%をキープ、看護していくには13対1看護では足りず、10対1看護を現在している。半年くらいは7対1看護でやっていたが、10対1まで落としてやっているところである。
  これは患者の退院先である。居宅が一番多い。入院目的であるが、在宅調整という所にリハビリ希望の方たちも入っている。診療科の内訳であるが、当院の特徴は内科系が非常に多いということである。これは年齢別途である。
  当院の患者像とソーシャルワーカーの支援をまとめてみると、内科系の患者が53%と多く、次いで脳外科18%、整形17%、65歳以上の高齢者が 84%を占めている。
  入院目的は、在宅調整や転院・転所の調整も多いが、結果的には家に帰る方が331人と多い。基本的に医療ソーシャルワーカーは全患者介入しているが、そのうち退院支援を濃厚に行っているのは約90%である。また、終末期を過ごす場所や緩和ケア目的の入院も受けており、当病棟で看取りが42だった。
  医療ソーシャルワーカーは医師・看護師と協力をし合いつつ、終末期の意思決定支援も行っている。転院・転所目的で来た人や、軽度の治療が長引いていた人、終末期で自宅に帰る事に自信が持てない患者の中には、60日という包括の期間を使っているうちに病状が安定したり、在宅サービスの利用により家で生活ができるというイメージや自信を持った人が出てきて、意外にも患者本人の気持ちが変わり、在宅へ移行できるケースも出てきている。
  これは地域包括ケア病棟の当院の受け入れの流れであるが、一番右側が他病院や地域からの相談である。入院相談は在宅復帰支援担当者の医療ソーシャルワーカーの私であるが、ナースと一緒に受付をして判定会を通して行くという形である。あとは当院の7対1病棟からの患者、それから外来、救急外来から入ってくる患者の三つの流れがある。実際の入院もとは、やはり7対1の院内からの患者が多い。
  これは院外、病院の入院、7対1から来た患者以外の相談実績であるが、地域包括ケア病棟に64%入院しており、7対1に22%。残念ながら受け入れができないと判断した患者が14%いた。院内7対1に入院している以外の、外からの相談元別分類であるが、在宅医からの相談が一番多く、他病院からの入院相談は少ないが、他病院からの入院患者は不可およびキャンセルが13件ある。
  現状であるが、介護度が重く、医療依存度が高いため介護保険施設で対応困難なケースのレスパイトや検査入院の希望が在宅医やケアマネから非常に多い。そして終末期の一時的入院希望や高齢者の食欲低下、終末期の判断に必要な検査や病状説明をしてほしいという役割、本人家族がそれらを理解していくプロセスや自己決定支援が入院相談の時点から必要で、ソーシャルワーカーも大きく関わっている。また病状変化やADLを伴った在宅サービスの再調整目的入院などがある。
  課題であるが、三次救急や救命センターからの、長期急性期的な患者の受け入れは、継続的な急性期医療が必要な場合が多いいため、当院は7対1病棟で受けて、そのあと地域包括ケア病棟に移ってもらっている。それから精神疾患や認知の方たちの入院が困難で、精神科病院との連携のあり方が重要になってきている。
  地域包括ケア病棟をするにあたり、患者は地域に帰ってまた何かあると地域から入院してくることで、地域包括ケア病棟を要にぐるぐる循環しているという印象を持っている。
  新しい取り組みと書いてあるが、私どもの病院にとって新しい取り組みであるが、発表された先生方はもう取り組んでいらした。当院としては介護保険法の地域支援事業である中区在宅医療相談室、これは厚労省の発表だと在宅医療・介護連携支援センターであるが、そこと3医師会と在宅医療検討会へ当院のソーシャルワーカーが月1回参加をして、連携の問題や在医療についてどうしていくか、共有できる物は何かと話し合いをしている。
  病院としては地域の協議会を立ち上げており、地域の意見を聞いている。近隣の病院と転退院の調整に関するシステム、検討ワーキングの立ち上げをしている。いっきに空いている病院が多くなったり、どこもいっぱいだったり、送りたい患者は区分1なのに、区分1の患者を探している病院がどこにあるのかわからないので知りたいというような、そういった事をうまくやり取りできるようになれないかということで立ち上げた。
  介護との連携も必要なため、区役所や包括、中区の6病院のソーシャルワーカーとの検討会を立ち上げたり、介護支援事業所との勉強も行っている。
  高齢者の在宅生活を支える医療・介護・福祉の連携について当院で地域の800事業主にアンケート調査を行って、当院にどんな期待があるか、どんな問題が地域、医療、福祉、介護の中で出ているかなどの調査をしている。
  今まで病院の話をしていたが、これは中医協で入院医療の調査評価分科会の中で地域包括ケアの問題点と課題が書いてあるが、地域包括ケアシステムの中で期待されている役割で多様な患者の受入が滞らないようにする事や入念な管理支援をする事が必要であることを、どのように取り組むかという事も課題として挙げられている。
  それについては、私や早坂さんも会員であるが、日本医療社会福祉協会の全国調査を地域包括ケア病棟についてしたが、社会福祉士イコール医療ソーシャルワーカーがいると、地域介護の受け入れが多く行われているという実態調査がある。このへんは医療ソーシャルワーカーが連携する事でスムーズに病院から病院、在宅などへ動いて行くという図である。地域包括ケア病棟における医療ソーシャルワーカーが円滑に動いていくことが必要になっていると思われる。
  まとめであるが、私自身がこれからの地域医療に必要な事として考えているのは、病院内の調整と地域の病病連携の理解と連携協力。それから地域の在宅の方たちの連携が地域の福祉、介護事業者との連携やお互いに話し合える仲間となり、協働できる力を付けていくという事が必要だと思っている。
  最後になったが、横浜中央病院の前には円形のモチーフがあるが、日本武道館を作った方が設計していて、エンタープライズ号に似ていると思っている。超高齢化社会の未知への挑戦も今後も頑張っていきたいと思っている。ご清聴に感謝する。

○池端幸彦座長
  地域包括ケアに取り組まれている現状と考え合わせて、連携室の役割、地域展開、地域連携会議や、連携等、お話をいただいた。またあとで議論したいと思っている。
  では最後に慢性期の立場で「これからの地域連携、急性期から在宅までのPathway」という事で、療養病床の役割。地元大阪の医療法人松徳会地域包括ケア本部の本部長である小澤陽子先生にお話をいただきたいと思っている。
  小澤先生はMBAを取っているということで、経営も詳しいメインスタッフという事で楽しみにしている。

〇小澤陽子
  まず病院の紹介をしたいと思う。
  今回の私の役割は急性期、地域包括、回復期合わせて療養病床は今後何をしていくのかというところを紹介しようと思っている。松谷ホスピタルグループであるが、大阪府枚方市にある。病院は療養病床40床、在宅復帰強化加算算定、老健ふじさかは入所80床在宅の強化型である。介護有料老人ホーム43床を持っており、この三つを核として医療と介護のサービスを提供している。
  療養病床は平成22年以前の連携では在宅分野においては本人を囲んでいろんな在宅のケアが介護の連携を組んでいた。その医療の部分が縦連携になっている。当時は維持・慢性期、診療所と在宅という形で縦の連携で、なかなか下まで降りてこない医療連携となっていた。
  私たち慢性期のところから降りずに老健、老健、特養という形で在宅に帰っていただいた2階層のサークルで患者の連携ができてしまっていたが、現在は高度急性期、また急性期から地域包括ケア病棟が今は75%、そしてこの患者の約70%が療養病床の在宅復帰型も含めて在宅に帰すという流れができている。私たちの在宅復帰型からは50%を在宅復帰ということで位置付けられている。
25%の残りの方と、一般から来る30%の患者が長期療養型の病院に移ることになり、ここでは重症患者、難病患者、ほぼ終身での対応という形で大きく流れが変わったというのが今の療養病床の現状である。
  療養病床は医療区分2、医療区分3、それ以外の3段階にアセスメントが分かれている。これにADLの1、2、3の区分を分け、3×3の9パターンの中に患者がどこに入るのかということで包括というアセスメントをしている。療養病床では長い間入院してもらう事と、費用もかなりかさんでくるので、入院相談をしっかりさせていただいている。そしてそれに基づく判定、入院時カンファレンス、退院可能かどうかを見て、退院時カンファレンスから退院というここまでがどこの療養病床でも大体出てくるルーチンかと思われる。
  ここからがローカリティー、地域特性であるが、松谷病院は大阪府枚方市という京都と奈良の境目くらいの所にある。医療療養病床が40床、医療区分2、3割合は90.8%という形である。8割あったらいいのであるが、一応90.8%となっている。平均在院日数は入退院数によって変わるため、少し動くが7月現在では140.4日だった。病床稼働率が96.2%、在宅復帰率83.3%、病床回転率が10%ということであるが、23.7%ということで伸ばしている。質の担保ということで、病院機能評価3回目の認定を受けた。
  枚方市の人口は40万人で、東部のほうは田舎である。私たちの診療圏内から少し離れているが京都市、奈良県も診療圏である。概況であるが、人口41万人、高齢化率は今年の1月で25%を超えた。病院数は産科病院のみ除いて24病院、大学病院が1、地域医療支援病院が1、という中で400床以上の病院が4病院、その他は200床以下の中小病院である。在宅医療機関は75医療機関あるが、現実に行くとやっていない先生もいて、医師会の把握が弱いところかと思っている。
  基幹病院を中心に在宅サービスや介護サービスを持った太陽系のような法人が周囲にたくさんあるというのが枚方市の現況だと思われる。地域に起こっているのは、一人暮らし世帯の増加、老夫婦世帯の増加。このへんは日本のどこでもそうかと思われる。
  新興住宅地、昔からの旧村と混ざっていて在宅療養に向かない古い住宅事情というのが地域としてネックになっている。昭和47年くらいから建ちだした5階建ての分譲マンションでエレベーターがないという住宅地が3、4あり、このへんが地域の中で介護力も含めて自宅に返しにくいという状況である。
  また、サービス付高齢者住宅をはじめとする住宅系施設がたくさんできた。これが競争状態となっている。かなり医療必要度が高い人でも取り合いになっている。
  そういう所で在宅診療になるが、「先生、重い患者が来たが、よろしくお願いします」と、施設がまた丸投げになっており、休日や夜が大変になる。いろいろな事情があるとは思うが、医療と介護の連携が違う方向に進んでいるところもあるかと思っている。
  当院にどういうところから入院が来るのかを3年間で調べてみた。N数を入れていないが、97、100、105ということで大体100、1%が1人という形で見ていただきたい。入院経路であるが、地域の急性期病院で枚方にもJCHO星ケ丘医療センターがあるが、関係医療機関を含め提携病院の急性期から入ってくるところが40%くらいある。あとは回復期や老健の患者をうちで受けるようになるが、意外と多かったのは自宅から入ってくることである。
  地域密着型の病院なので地域の方から入れるということで受ける事が多いというのが3年間を通して見られる所である。急に増えてきたのが急性期からの伸びで、これは先ほどの75%の在宅復帰率、うちが強化型を取った事もあるが、顕著に現れたと思われる。近隣からではなく、かなり遠いところからの患者もあり、大阪医療センターから話をいただいた事もあるが、今まで北河内、奈良市くらいからだったが、かなり広いところから話をいただくようになっている。
  退院先は死亡退院がほぼ半数に近い。急性期に戻る患者は急性増悪でうちで見られないので仕方がないが、退院に関しても自宅や施設に帰るように支援している。地域包括ケア病棟を取ってはいないが、機能的に長期の療養病棟では無理がきている動きになっている。退院に関して、療養病床は1カ月以上入院をした人を分母として数えるため、早く治って2、3日や1週間で帰った肺炎の方は在宅復帰に入らないという事もあり、今後考えていかなければいけないところだと思っている。
  帰れる人というのは介護力があったり、資金力があったり、食事が取れる事が非常に大きい。施設の方でも食事が食べられなかったら絶対に取ってくれないので、ここが決め手である。そして帰れなかったり帰りにくい等のかなり困難なケースは、一人暮らしではないが、家族との関係が悪く、協力をしてくれないという事、資金力がない、年金が微妙、このへんは枚方市の保護課の職員にも「小澤さん、年を取ったらお金はないか山ほどあるか、どちらかにしないといけない」と言われていて、微妙なところが施設入所に困難なところになっている。嚥下が悪い、重度の医療行為が必要になってくるとますます帰りにくい事になると思われる。
  これに対する取り組みであるが、家族が「何かあったらどうするのか」というところで、まず、訪問できる体制や急変時に対する不安を払しょくするサポートが必要だということである。
  今、急性期病院との連携をしていく中で、当法人のような規模の小さな法人は、地域完結型というのを目指すべきであり、当院だけではできない事を地域の先生方と連携を取って進めていく事が求められる。当院からの退院では、退院時カンファレンスもやって、退院先の施設や、在宅医療機関等との情報共有を行なっている。
  施設ではこの頃、看取りを含めて、医療必要度の高い高齢者を取る事が多々ある。そういった患者をサポートしていくためには、施設でできることを増やしてもらい、急性増悪する前に、早めのメディカルアセスメントを取ってもらうことがポイントである。朝に具合が悪かったら夕方の5時まで待たずに3時くらいで決着を付けるということをしないと緊急出動が増えて、在宅医療を見ていくのは難しいと思われる。
LTACに関して言えば、長期急性期の患者は三次急患の受け入れ患者が多いという中で三次の救急から療養病床が受けるにあたって高いハードルだと思うところは、看護体制が薄いという事である。頑張ってはいるが、三次救急から来られるとさすがに救急時の対応に関しては弱い。それから三次急患では使える薬や治療が療養では使えなかったりする。これが療養病床の泣き所となっている。家族の理解が必要であるが、ここが理解してもらえないことがある。
  療養病床での可能性を考えると、在院日数に余裕があるので、「ジェットコースターに乗ったように療養病床まで来て、何がどうなったかわからない」という家族や患者本人が、今後の生活についてゆっくり考えていただき、前を向いていくという時間が持ってもらえるようにサポートすることかと考えている。と思っている。
  また三次救急では入院治療がしにくい慢性期疾患の治療は得意にしていると思われる。三次救急では最後までたどり着けないターミナル患者、ガンのように治療がなくなれば退院しなければいけない患者に対しての看取りも私たちは得意にしているところでもある。ADLの改善に関しては力を入れている。こういったことに関して、家屋などに理解してもらいたいが、なかなか納得してもらえないところがある。
  そういう課題をどうして払しょくできるのか。地域包括ケア病床というのが、その鍵なのかと思っている。20対1の看護基準や入院期間1カ月以上の縛りなどのルールがあるため、療養病床は、治癒して早期に帰る患者や、急性増悪による医療必要度が高い患者については取りにくく、時々入院ほぼ在宅を目指すためには、診療報酬上も施設基準上も地域包括ケア病床が理想的なのではないか、
急性期ベースの地域包括ケア病床ではなく、療養病床ベースの地域包括ケア病床のあるべき姿というのを考えていきたいと思っている。ご清聴、感謝する。



(了)

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