日本長期急性期病床(LTAC)研究会 第3回研究大会 開催報告

《基調講演》
大阪緊急連携ネットワークの過去、現在、未来
座長:定光大海(国立病院機構大阪医療センター救命救急センター診療部長)
演者:井川誠一郎(医療法人恵泉会浜寺中央病院院長)

〇定光大海座長
  本日の最後に「これからの地域医療連携」というテーマのシンポジウムを予定しているが、その前に基調講演として井川先生に、大阪でスタートして7年になる「大阪緊急連携ネットワーク」についてご紹介いただき、今後のあるべき姿もお話しいただけたらと思う。
  井川先生にお話ししていただいた後、大阪府から若干の指定発言もお願いしているので、よろしくお願いしたい。できるだけ時間いっぱい発表いただきたいと思う。

〇井川誠一郎
  「大阪緊急連携ネットワークの過去、現在、未来」というテーマでお話をさせていただく。当初、何を話したらいいのか非常に悩んだのであるが、このようなテーマを定光先生からいただいた。今までやってきた事、将来の今後をどう考えていかなくてはいけないかということを含めた形で話をさせていただこうと思う。
  そもそもここにいる急性期病院の先生方にとって「大阪緊急連携ネットワークとは何か」、全く聞いたことがないネットワーク、という話であるが、これは平成20年、つまり7年前から続いている、大阪府下全域を対象とした三次救急施設と慢性期医療機関の医療連携である。
従来、慢性期医療機関が医療連携をしている場合、急性期病院一つと慢性期病院がぶら下がりのように何施設かがくっついて、地域、小さな医療圏の中でやっていくという連携が多かったが、このネットワークに関しては大阪府全部を対象としており、三次救急がほとんど入っている。慢性期医療機関の40くらいが入っているが、そういう医療連携である。
  これがまず、開始された背景である。当時、すなわち平成18年くらいに非常に「たらい回し」という言葉が社会現象になり、大騒ぎになった時期。その時期に、厚労省がいろいろ調べた結果、平成10年から20年の間に10年間で51%の救急出動件数および搬送人員が増加している事が判明した。平成20年以降、ここ20年で一回下がっている。これはたらい回しでワーワー騒ぐ、救急車がどうのこうのという話で、一般市民か救急車を使うのを控えていただいたという事で、いったん下がったが、その後また再上昇している。今現在、どんどん増加の一途をたどっているのが現状である。
  その当時、10年の間で搬送人員の何が増えたのかを調べると、小児や成人はほとんど変わっていない状況であるのに対して高齢者が軽症、中等症ともに非常に増加していた。特に軽症に至っては倍増している状況であった。それは現在もほとんど変わりがなく、これは25年度の消防庁の調査であるが、各消防本部になぜ増加したかという理由を聞くと、高齢者の傷病者の増加と75%が回答したというのが現状である。
  年齢区分別搬送人員構成比率で言うと、定光先生は「大阪はまだ49%」と言っていたかと思うが、実は全国的に見ると50%を超えている。平成25年では54%と増加した。平成20年度で48%であった。平成26年版救急救助の現況では未だに高齢者が増えているのが現状である。
  最近、在宅復帰が進み、在宅復帰は老人ホームなどの施設に入っていくわけであるが、そういう所からの搬送比では平成10年から10年間で約4.7倍という増加を示したというデータがある。一方、救急公示医療機関はやはり総じて減ってきているのが現状である。
  そうするとどうなったかと言うと、二次以下の医療機関で受け入れに至らない、いわゆる不応需が年間に10万件以上。三次医療機関でも3万件以上が不応需となり、最終的には救急救命センターに流れていく。最後の砦が満タンになっていくというのが現状であった。
  それを見た厚生労働省は「救急医療の今後のあり方に関する検討会」を平成19年12月から始めた。合計8回の検討会をし、第4回の平成20年4月30日に、ここに座長としておられる、大会長の定光先生が参考人として答弁され、ベッドがなぜ満床になるのか、受け入れた患者がなぜ救急救命センターの中で滞ってしまうのかという話をされ、それに日本慢性期医療協会が食い付いたのである。
食い付いた結果、定光先生がここでLTAC研究会の大会長をさせられているということである。そこでこれは何とかしなければいけない、慢性期医療側としても何かしなければならないということで、本連携が誕生した。
  受け入れに至らなかった理由をみるに三次救急、高度急性期、救急救命センターと、二次救急とは実は色合いが違う。二次救急まではベッドが満床1割5部しかないが、三次救急はベッドの満床が4割近くを占めているというデータがあり、定光先生が出た第4回の時、参考資料として出されている。
  そして、大阪緊急連携ネットワークを慢性期医療機関が中心となってやるということで、大阪府の救急病院に声を掛けてもらった。
  二次救急というのも入れると非常な数になるので、三次救急施設だけに特化した形で始めている。目的は三次救急に搬送されたミスマッチ患者のスムーズなドレナージと三次救急施設に長期入院患者をできるだけ受け入れて、病床回転率を上げようとしたことであり、平成20年12月10日から開始した。
  当初、三次救急施設は5施設、慢性期医療機関22施設であったが、現在は三次救急が15施設となっている。大阪府下にはこの8月に堺市立病院が総合医療センターになり、一つ増えて16の三次救急施設がある。その内二つの大学病院、私の母校である阪大と関西医科大学の2カ所を除いてほかの全て、全施設入っている。
  特殊な病院として国立循環器病センターがあり、盲腸の手術もできない。心臓と脳血管だけに特化しており、ほかの事は何もできない。ただ患者がかかりつけという意識が非常に強い。何でもかんでも国立循環器病センター。救急車で運ぶという状況になっており、それのドレナージも、むこうの先生に言われて、ここに入っていただいている。現在、慢性期は40施設である。
当初救急側が5施設だったのがなぜかと言うと、東京とは違って大阪は当時、独立型の救急救命センターが非常に多かったからである。
  独立型は全国的に見ても非常に少ないが、大阪はそのうちの四つあったと思う。独立型というのは40床の小さな病院が救命センターしか持てないというところなので、すぐに満床になってしまうとどこにも逃げようがない。
よく「救命救急24時」というドキュメンタリーで出ている所は多くは大学病院なので、いざとなれば脳外科の方は脳神経内科に移ったり、そういうことができるが、大阪府下の場合それができなくて、ここに参加三次救急5施設の方はほとんどがかなり独立型であったというのが現状である。そのあと口コミで次第に増え、現在16の施設になっている。
  これが三次救急施設と慢性期病院の分布図である。どうしても東京の場合は中心部に三次救急が集中し、サテライト側に慢性期がある。なかなか山手線の内側に慢性期の民間病棟があるのは金銭的にも不可能という感じであるが、大阪はそういうのがわりとなくて、独立型の三次救急を作った段階で、かなりサテライトに作ったので結構散らばっている。そういう意味で言うと、逆に大阪府下全部でしたほうがいいという事で、まとめてやらせていただいている。
  実績であるが、連携紹介が631例。男性400名、女性232名。年齢は16歳から99歳で平均は68.2歳。紹介患者の依頼までの在院日数は26.9日である。長期に入院している方が多く、3週間以上は44%を占める。2カ月以上も13%くらいいるのが現状である。その患者もわれわれで調整をしているが、調整済みというのは転院していただいた方だが大体6割近い359例が転院の中、調整中の1例が先日転院され、実際は360例であるが、そのくらいは転院してもらっている。
  調整をしている最中、転院先の病院を示す前後に急性期側等の都合、急激に悪化しただとか状態が悪いという理由でキャンセルが出たものそれぞれ115、100人でトータルして34%くらい。慢性期側でとても取れないということで、これは無理と断ったものが約1割、57例あった。
紹介から転院までに要した日数は0日から121日。平均して12日くらいであった。3日以内が81例、1週間以内が178例で49.6%。0日とは何かというと、三次救急施設で外来に来て、そのまま何とかならないかと電話をもらって、そのままこちらで救急車回してくださいという事で取らせていただいた例がある。
  完全不調例が57例であるが、精神症状によるものが20例、不穏・暴力行為・徘徊、統合失調症に該当する精神疾患。自殺企図があってある程度動ける方となると、なかなか目が届かないという事もあり、難しい。病状によるものとしては脊損後早期で不全まひを起こして1、2日で回復したがまだ血腫が残っているためまだ心配がある方は取れない場合がある。そして社会的背景は覚せい剤、最近問題になっている反社会的勢力。最近厄介なのが高額薬剤である。抗がん剤などは慢性期でも取れるが、注射薬、定期的に打ってくれと言われるとかなりの方で難しいので取れない。
  紹介患者がどのような状態で来たか、紹介いただいたかを示している。人工呼吸器、気管内挿管、切開、酸素投与、頻回吸引がある。薄い緑色が全数。ブルーが転院例で調整不能例がこちらに書いてある。全数や転院例でにして言うとあまり変わらない。人工呼吸で大体10%から15%程度、気管切開も40%を超える程度。酸素投与も40%弱。頻回吸引が50%を超えている状況で、逆に調整不能であった症例は非常に低い。つまり病態そのものがあまりひどいから取れなかった、転院を断ったということはほとんどなかったのが現状である。
  この連携の特徴は全ての転帰を把握している事にある。359例あるが、全例の転帰がわかっている。入院中が57人、16%。生きて帰ったのが135例、38%。死亡退院は実は長期に入院してもらっているので、何をもって死亡退院としていいかが問題であった。例えば手術だと手術死亡というのが1カ月以内というのがあるように、一応転院後3カ月で切った。3カ月以内に亡くなった方を死亡退院として、残りの方は遠隔死亡としている。死亡退院は大体14%、51例。転院された方が40例、11%。遠隔死亡は始まって7年近くなるので、転院してきて最終的にはガンで亡くなるという方もいて74例、21%となっている。死亡退院の内訳であるが、転院時にすでにJCS3度であった方が19例、悪性腫瘍の退院が4例、85歳以上の高齢者が17例あった。
  この連携ネットワークは大阪と東京で始まった。大阪では非常に大所帯で始めたのでいろんな工夫をはじめから凝らしていた。何をしたかと言うと、まずは慢性期主体のコーディネーター制である。なぜかと言うと、三次救急の先生が慢性期病院をどういう物かを知らないし、その上慢性期病院にもいろんなレベルの病院があるので、この病院はこれができる、この病院はこれができないという事もあったので、慢性期を把握して紹介させていただいくということで、当初はコーディネーター制を取った。そのために三次救急から紹介をいただくとコーディネーターへまず紹介する。
  その段階でコーディネーターが病院を選択し、各慢性期医療機関に打診する。受け入れ可能であればコーディネーターが三次救急施設に報告をし、施設間打ち合わせをし、最終的に決定する。駄目ならば全てコーディネーターに1回戻ってくるというシステムを当初は作っていた。最終的にこれは無理だという判断を下すのも全てコーディネーターがしている。
  もう一つは連携シートといっているが、はじめから慢性期病床からいただくデータである。この中には療養病床がどれだけあるとか地域包括ケア病床とか、在宅復帰加算という事も書いてあるし、リハビリのセラピストがどの程度なのか、保険外費用がどの程度かかるかという事が書いてある。もう一方の欄に現在36項目の受け入れ可能な状態という形で書いていただいている。それがこれである。人工呼吸器を扱えるのか、TPNを扱えるか、気管切開を扱っているかという形で書いてもらう。
  全部これについてのデータをわれわれもコーディネーターも持っているし、これに関しては最終的には三次救急施設にも配布している。結果としてどの程度の割合で受け入れが可能であるのかと言うと、人工呼吸は約半数。気管切開・酸素吸入・誤嚥性肺炎・脱水・尿路感染が9割以上。1施設だけ難しいというのがあったが、これは精神科単科の1施設であったのが現状である。一方非常に低いのが人工透析、精神疾患重度、徘徊、そういう患者に関しては受け入れが難しいというデータを始めからいただいていた。
  三次救急側からの転院依頼もこういう形で書いていただいている。保険外費用がどのくらい払えるかとか、現在人工呼吸器が付いているのか、気管切開されているのか、中心静脈ルートが入っているのかという基本的な事を書いていただき、紹介していただいたら、そのファックスだけでコーディネーターに届くというシステムを置いている。
  徹底した転帰報告をする。コーディネーター側で前例の転帰を会議直前、このあとに申し上げる3カ月ごとの会合とありますが、その直前に全部把握し、会合で報告をしている。これがまとめて各三次救急に配布する資料であるが、例えばここに紹介いただいた急性期病院の三次救急の名前、それから患者の年齢、性別、病名、三次救急に入院した日、紹介した日、転院した日がここに書いてある。一番右に転帰が書いてある。国立大阪医療センターから平成21年10月6日に入院し、10月30日に紹介され、約20日後、11月20日に転院している。ここに書いてある転帰が報告される。入院中に肺がんと診断され、BSC方針で入院継続するも平成25年ですから約4年後にその病院でその後亡くなったという報告まで加えていく。
3カ月ごとの会合、これはface to faceでできるだけ病院から1人出てもらう。現在出席率は80%以上を確保しており、6カ月ごとにはドクターも含め各施設長も来て話をしている。始めからずっと会議形式、レクチャー方式は取らずにずっとロの字でやっている。最近、70名を超えてロの字の端から端までが遠くの人が見えない感じになってきているが、あくまでもface to faceにこだわってこういう形を取っている。出席率が80%で参加者数は60名を超え、70名を超える時もある。
  これは紹介まで三次救急入院期間を、約2年ごとに分けているものであるが、ほとんど変わらない。大体、20日くらい過ぎていくと、そろそろ紹介状を書くという形で紹介をいただいている。
これは紹介形式、コーディネーター制を取っていると言ったが、このくらいお互いに顔見知りになっていると、直接依頼が非常に増えてきている。その増え方がこれである。地域連携室から地域連携室に直接流れていくパターン。コーディネーター経由は始めのうちは8割以上だったが、どんどん減り、この1年半では大体2割で、ほとんどお互いに黙っていてもやっているという形になり、かなりコーディネーターとしては楽になった。これも会議をやってきた成果だと喜んでいたが、実は一つ喜べない事態が起きている。それは紹介から転院までの日数推移である。
  始めた頃はコーディネーターが頑張ってできるだけ早くやってという声掛けをして進んでいくという形で、大体1週間以内に転院できるという状況で2週間までを含めると8割の症例が2週間以内に救急から依頼した段階で転院が完了してしまうという、非常に早い時期に回転していた。それが少しずつ伸びて普通の医療連携、普通の紹介患者と同じような扱いに近づいてきて、最終的に今は1週間以内が40%を切るくらいまで下がったというのが非常に大きな課題で、これをもう一度持ち上げないと、三次救急にいる期間が長くなるので、今後の大きな課題だろうと思われる。
  この診療報酬改定で地域包括ケア病床、在宅復帰の機能強化加算が創設されたが、三次救急から転院するにあたって一番調べているのは在宅復帰加算が取れるところであるということで、その二つの施設基準を満たしていくかどうかを調べている。そうすると予想に反して地域包括ケア病棟が少ない。40施設中5施設しか取っていない。しかも一般病棟から移ったのが3施設。亜急性期から移行したのが1、療養病床からはわずか1施設しかないというのが現状であった。一方、在宅復帰強化加算は16施設取られており、うち3施設は地域包括ケア病棟も取っているので、地域包括ケア病床に入って、そのあと在宅復帰強化加算の療養に入るという流れを作っていると思っている。回復期リハビリテーションだけしか持っていない施設、精神科病棟が1施設ずつであった。
  今後、大阪緊急連携ネットワークはどうなっていくかを考える上で、まず大阪だけがこの状況でいいのかという話で、全国を見てみた。とこれは26年1月、人口10万対病床数であるが、非常に差がある。一番少ない埼玉、神奈川、そういう所は高知県と4倍近い差がある。ほとんど一票の格差の憲法違反みたいな感じになっている現状である。
  そうするとこのへんのところは絶対に病床数で困っているのは間違いないと思われる。大阪はどの辺に値するか。大体、平均は10万人あたりに1000床くらいで大阪も平均あたりである。一般病床と療養病床で分けてみた。大阪は大体これも平均、0.35くらいの比率である。これが何を意味するかというと、今後の高齢化について考えるとき重要である。
  大阪というのは実は全国で4番目、2010年から2025年の間に1.8倍くらいの高齢化率が上がるといわれている。先ほど病床数の低かった地域、神奈川などは絶対的にどう考えても足りなくなってくる。病床数そのものが少ないですから足りなくなるのは間違いない。大阪も同じように今後足りなくなってくるだろう。
  これが病床数が10年後に削減という、今年の6月の産経新聞と朝日新聞に出た記事で、その時に出たのがこの地図である。高齢化率が非常に高い地域と大阪府と沖縄だけは病床数が足らない。それに比べて非常に多かった高知県や鹿児島県、愛媛県、福島県、そのへんに関しては3割以上が余っているという話になっているわけである。
  大阪府下で慢性期医療施設に今後どういうものが求められるのかとなると、絶対的にはマスが足りず高齢化率が非常に高くなってくるということはどういうことかというと、三次救急の患者数が増える。少なくとも2025年までは増え続けるだろう。そうすると大阪府下ではポストアキュートとサブアキュートの世界では、これに見合う病床がさらに必要になってくる。ドレナージする病棟が絶対に必要である。もしくは三次救急に直接流れ込まない受け取り病院が必要になってくる。転院患者はより重症していく可能性が高くなる。普段患者を見ているのが医者かというと、例えばポストアキュート、サブアキュートの世界では医者が24時間ICUのように付いていることはまずないので看護師が見ている。そうすると看護師がしっかり観察できて、看護のレベルが高く、早期に異常を見つけて医者に報告できるかどうかに掛かってくる。それができるかどうかというと、今の療養病床の看護基準20対1では厳しいかもしれないというのが私の考えである。地域包括ケア病棟へ転換が急務だと考えている。
  以上をまとめると、三次救急施設と慢性期医療機関の医療連携を大阪府下にて約6年半にわたり実施し、600例以上の紹介を受け、そのうち約6割の症例を転院させた。転院後の転帰では約4割の症例が在宅系へ退院しており、十分な成果を上げていた。定期的なface to faceカンファレンスにより、コーディネーターを介した紹介は減少したが、同時に紹介から転院までの期間が延長しており、今後の課題となっている。
  近未来の急慢連携のキーとなる地域包括ケア病棟への移行は療養病床からはハードルが高く、20対1を13対1に上げるという非常に大変で、データベース加算をやるのもなかなか進んでいないが、特に大阪府下、東京地域にはそのうちの患者の重症化を考えると、今後これを移行して推進していかなければいけないのではないかと考えている。以上である。ご清聴、感謝する。

○定光大海座長
  地域の構想という意味では大阪府がこれから紹介していただけるので、井川先生の講演に対して何か質問などがあれば、あとのシンポジウムで発言をお願いしたい。それでは大阪府健康医療部保健医療室保健医療企画課長、西野さんに「大阪府の地域医療構想の取り組み」ということで若干の時間をいただき、発言していただく。

〇西野誠
  大阪府健康医療部保健医療室保健医療企画課長の西野である。午前中に佐々木室長から地域医療構想について細かく説明もあったので、今回4つの病床機能に分化していくという話について、大阪としてどのような分析をしているのか説明したいと思う。
  大阪府の人口は2025年にかけて約70万人増加し、伸び率が全国で4番目の高齢化を迎えることになっている。これは高度成長期にたくさんの人が大阪に流入したことが大きな要因になっている。
  今回、病床を国のガイドラインに基づき、4つの機能に分化することで、こういうC1、C2、C3ということで3000点、600点という件数で病床を推定するということになる。
  今、大阪府として分析作業をしており、今回、国から支援ツールという形でデータ等が配信されている。このデータが何を分析しているかであるが、基本的には二次医療圏単位、これを構想区域と呼ぶが、こういった単位で2025年度の医療治療と必要な病床数の二つを推計していくことである。
  当然、患者というのは出入りしているので、圏域間移動、他府県間での移動についてもしっかりと管理していくことになっている。4つの機能に分化していく事とあわせて疾病別にもある程度の理論値を今回入れることになっている。こういった事をあわせて推計をしているところである。
  こちらは大阪府全体の推計である。4つの機能に分けているが、議論が起こる前には分けていなかった。今回、国のガイドラインに基づき推計を公開したもので、この数字も推計ということで見てほしい。2013年から2025年の部分については高齢者の人口の伸び、性別、年齢を階層別にそれぞれ細かく計算をして伸びを出している。
  高度急性期、回復期、このあたりは1.12倍から1.3倍まで増加する。これは高齢者が大きな要因である。注目するのは在宅医療等という部分で、1.74倍と今回推計の中でもかなりの数の患者が病院から在宅にシフトするといった推計がなされている。
  慢性期も在宅にかなりシフトしたので、慢性期そのものは若干大阪府の中で減るということで1日辺りの患者数を出している。
6月に内閣府が出した病床の数で、1割削減になった。全国全病床数135万床が115万床になるので、全国的に2025年には20万床が削減されるのではないかという推計がある。これは参考値で説明しているが、大阪府病床数に置き直したものがこちらである。
  伸びについては先ほどと同じであるが、現状の推計した病床、これは86,618床となった。今、大阪府の現状で一般と療養病床数が91,400床あるので、現状で見るとここは5,000床ほど過剰になっているという数字である。大阪の場合、約2万床ほど過剰になっているが、この推計結果とは言われ方が全然違うので、一概に比較はできないが、この病床の推計で見ても、現状では5,000床過剰になっているということである。ところが2025年になるとこの数が101,000床まで必要になってくるため、逆に1万床不足することになる。今回、増床するという、足らないという結果になったのは大阪以外にも5県あり、関東圏と沖縄となっている。現状はこうであるが、将来は足りないということで、増床が可能かどうかについて、現状で直ちに病床を増やすのは難しいと思っているが、将来的にはどうするかというのが課題になっている。
  病床機能報告制度が昨年から始まり、これは大阪府の数字である。大阪は91,000床と言ったが、6,000床が未報告の状況なのでそれを差し引いて見ていただきたい。
  高度急性期と慢性期について、2015年についてはほぼ均衡が取れている数字になった。逆に急性期が8,500床過剰で、回復期が24,000床足りないという結果になった。急性期から回復期への移行を図っていく必要があり、回復期についてはこれから充実していくという方向性が必要だと考えている。
病床報告については国でも議論が進んでいるが、あくまでも昨年の数字ということで見ていただきたい。この転換を進めていくということで、われわれとしては、昨年から基金事業を使い、急性期の7対1病床から例えば地域包括ケア病棟、緩和ケア病棟に転換される場合には一定の補助金を出すといった施策をしている。
  病床については大阪の場合は北と南では事情が違い、この網掛けが報告制度で、白抜きが必要病床数である。大阪の北の豊能地域では、高度急性期については過剰で慢性期が足りない状況になっている。南の泉州地域では先ほどの逆になっていて、高度急性期が足りなくて慢性期が過剰になっているという状況である。
  大阪のような交通の発達している所であっても、北と南で医療の状況が違うというのが今回の結果で見て取れる。
  これはイメージで見てもらいたいが、患者がどのような動きをしているかというと、大阪には8つの医療圏あるが、例えば大阪市内に全部の医療圏から患者が入ってきている状況である。ほかの県からは兵庫県、奈良県。奈良は中河内を飛び越して大阪市に患者が入ってくるという状況である。これを慢性期で見ると逆に大阪から出る線があり、市内から周りの医療圏に慢性期の患者が出ていくといった事が今回の結果である。
  まだ分析が足りないところではあるが、疾病別にも見ていく。保健医療計画でも示している5事業5疾病、であるが、ガンであれば大体の圏域内で補完されているが、特に豊能、南側地域、大学病院やそういう所には患者が流れている。こういった地域別にも分析をしていくことにしている。
  国のデータではここまでの分析ができるが、もう少し細かく見ていくのが難しい状況で、NDBデータ、生データを取得して、もう少し疾病がしっかり見られるように分析をしているところである。秋冬までにかけて分析を行い、必要な議論をしていきたいと考えている。今の状況ということで報告をさせていただいた。以上である。

○定光大海座長
  先ほどの議論の中に、行政は都道府県の範囲を超えたデータ分析は難しいとしているが、実際に救急医療は広域化している。先ほどお示しいただいた、スライドには奈良県や他県が入っていた。こういったものを含めた病床のニーズという分析は今後、想定されているのだろうか?

〇西野誠
  そこはしっかりやろうと思っていて、多分、この奈良県から入ってきているという話があったが、患者が救急になったら流れてくるのかもしれないと思っている。いろんな救急のデータは消防庁のデータなどいろいろとあるので、いろんなデータを活用して少し気になるところをしっかりと見ていきたいと思っている。

○定光大海座長
  地域包括ケア病棟の申請というのは、大阪府ではどうなっているか教えてほしい。

〇西野誠
  直近で把握しているのは約70施設。800床ほどと聞いている。7対1から転換をする場合、補助金を用意していると言ったが、実は補助金の執行が0で、転換するケースがない。今年は3件くらい手を挙げていただいているが、地域包括ケア病棟に転換というのは、急性期から起こりにくい。慢性期からは聞いているが、急性期からはそういうのはまだみられないというのが現状かと。

○定光大海座長
  大阪は急性期医療機関が地域包括ケア病棟の申請は少ないと?

〇西野誠
  転換は少ないと聞いている。

 

○定光大海座長
先ほどの井川先生のデータでは慢性期からの転換は敷居が高くて少ないというデータだと思っていて、そのへんが見えないところがある。またデータを教えていただけたらと思う。ご回答に感謝する。

 



(了)

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