日本長期急性期病床(LTAC)研究会 第3回研究大会 開催報告

《大会長講演》
急性期医療と地域連携
座長:上西紀夫(公立昭和病院院長、LTAC研究会会長)
演者:定光大海(国立病院機構大阪医療センター救命救急センター診療部長)

〇定光大海:
  本研究会の第1回は上西紀夫先生が大会長をお務めになり、「長期急性期病床(仮称亜急性期病床)とは何か」というテーマで、今後の医療体制、特に病床の問題を論じた。そして第2回は「熊本から考える新たな地域医療連携のかたち」をテーマに開催した。大会長を済生会熊本病院院長の副島秀久先生がお務めになられた。そして第3回を迎えた今回、「病床機能分化と長期急性期機能」をテーマに開催することとなった。
  まず、国立病院機構大阪医療センターの紹介をしたい。今大会を開催しているこの建物は緊急災害医療棟である。当院は災害拠点病院として、地域の中核的な病院の災害を担うための施設に位置付けられている。この講堂は、災害が発生すると多くの患者さんを収容する施設となるが、普段はこのような講演会やセミナーなどに利用している。
  総合病院であり、救命救急センターが30床で主に三次救急をやっている。そうした病院でなぜ急性期から慢性期に至るところへの連携か、というところだが、約7年前から救急医療、特に三次救急の出口問題があり、そのためにどのような連携が必要かと考えたときに、日本慢性期医療協会の武久洋三会長から連携の申し出があった。以後、大阪緊急連携ネットワークを続けてきた関係で、この会にも参加させていただいている。
  本日のテーマは「急性期医療と地域連携」。当院は大阪城もNHKも近くにあり、隣は難波の宮があり、地震にも強い場所ということで三次救急を主にやってきた。従来の救急の施設は初期、二次、三次といったヒエラルキーの中で、メディカルコントロール体制のもとに患者搬送を行い、そこで受け入れた傷病者は医療機関を通じて、各医療施設に移っていただくというシステムが回っていたが、病床機能の分化に伴い、単純にはいかなくなった。
  病床機能報告制度による医療機能は、「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」に区分されるが、当院は救命救急センターや集中治療室など高度急性期機能と一対一の対応ができ、回復期の患者は回復期リハビリテーション病棟で対応できる。しかし地域包括ケア病棟では急性期なのか回復期なのかが難しく、また、必ずしも一機能と一対一の対応が求められるものでもない。境界線を伴っているものではなく、機能的には多様なものがある。
  地域包括ケア病棟は地域の中核になる医療機関であり、長期療養介護、それから急性期に至るまでの中心的な役割を担うと謳われている。高度急性期、急性期の患者さんも、地域に戻し、在宅や他の病院に移っていただくために、その前段階として地域包括ケア病棟など、地域に密着した病床に移っていただくということになる。そこの機能を長期急性期機能が担っていると考えていいと思う。
  救急患者を受け入れる医療機関としては、救急医療機関、急性期病床、一般病床などがあげられる。大阪府において救急医療機関は、一般病床を有することなど、救急告示医療機関の要件として病床の規定がある。今後は地域包括ケア病棟も急性期医療を一部担うということで救急告示医療機関としての登録が可能になるように改定が必要になってきた。そこで救急告示医療機関の認定基準も本年になって改定された。「一般病床を有すこと」という認定基準を削除して、受け入れ実績を評価するための要件が追加された。段階的な評価はあるが、そうした形になっていった。
  病床機能再編のイメージは「ワイングラス型からヤクルト型へ」と言われている。7対1病床を減らすことが基本であろうが、ここに「地域に密着した病床群」というものが重要な要素として病床再編の一翼を担っていると思う。これは長期急性期機能と概念的には一致するかもしれないし、地域包括ケア病棟というのはそういう役割を担っているということもあるかもしれない。
  そこで、我々の救命医療センターの救急に関して少し言及させていただくと、全国的にも同じ傾向だが、大阪市の救急搬送件数の推移を見ると、平成20年頃のキャンペーンで一時期救急車搬送は減ったが、その後は増加傾向が続いている。
  後ほど、人口減についての話を高橋先生からしていただくが、人口は確実に減っているものの、救急搬送は増えている。そのギャップは何かというと、やはり高齢者の増加ということである。平成26年度までの大阪府消防局の搬送数の年齢別の推移を見ると、やはり高齢者が多い。平成26年には65歳以上が49.4%、ほぼ半数が高齢者となっている。こういう状態に加えて、高齢者もさることながら、世帯の問題も含まれている。夫婦のみ高齢者の世帯、および高齢者の独居が圧倒的に多くなっている。そういう意味では高齢者だけの生活居住区、あるいは独居老人がどんどん増えていくことになるので、そういう人に対する救急体制、医療提供体制が大きな問題として残っている。
  2年前にすでに報告してきたことだが、2012年までの内因性院外心停止の発生場所を見ると、住宅居住区域が半分以上を示している。ADL自立した方でも半分以上は住居で心停止している。高齢者のみの世帯だと、救急車で高次の医療機関に運ぶしかない。あるいはそのまま亡くなった状態で発見されてしまうこともあるかもしれない。あとは介護支援の住居に住んでいる方といった状況だった。2014年についても同じように見ているが、医療制度が変わってきても、状況はあまり大きくは変わっていない。従って今後、自宅や施設にいる方に突然何かが起こった時にどうするか、今は救命救急センターを始めとした救急医療機関へ搬送ということで対応しているが、それだけでは済まない状況が来ていると思う。オーバーフローしてしまい、心肺停止後の蘇生後脳症の患者さんがずらっと並んでいるということは、お正月や夏の救命センターではよく見られる光景である。そういうことも医療資源の有効利用という意味では問題があるかもしれないが、やはり受け入れできるところが受け入れるしかないという状況はたしかだ。
  こういう状況で、最近では在宅復帰率が急性期の病院に求められるが、救急医療を前提とした単独の救命センターを有した病院では、当初、在宅復帰は75%を超えるのがかなり難しいという状況があった。
  2年前のデータになるが、結果的に、自宅に帰るのみではなく、他の施設に移す、あるいは慢性期医療機関に移っていただくという形を含めて80%になっていた。
  大阪緊急連携ネットワークは大阪府下の日本慢性期医療協会の会員22施設と、3次救急医療機関5施設でスタートし、現在はもっと増えており、赤で示したような施設数となっているようにずっと続けてきた。いろんな特徴があるが、後ほどの講演で井川先生にお話いただけるかと思う。その中でやはり、救命センターや急性期病院が抱えている患者をトリアージしていただく、診ていただくという形で、長期入院の例が相当数転院できた。急性期病院はこれまでこういう人たちの対応をせざるを得なかった。こうした患者をうまく調整して転院させた先で診ていただく必要がある。また、移っていただいた施設でも退院までたどり着くには相当の時間がかかっている。ずっと入院していたり、長い間診ていただいていたり、やはり慢性期医療機関でも同じように出口問題はあるということを示していると思う。
  私どもは同時にすごく難しい転院困難例をたくさん抱えているが、身体の状態ではこれはある程度は仕方がないと思う。しかし社会背景や家族の方がネックになっているケースもけっこうあり、慢性期の病院病床のほうが圧倒的にケア関係はいいんですよ、と説明してもなかなか急性期から出てくれない。希望との乖離ということもまだ残っているだろうが、社会背景も大きく、社会支援の仕組みも考えていかなければいけない。
  長期入院の3例をここに示したが、病態が重篤であるものをすべて急性期、および長期急性期で診るのかというと、なかなか難しい時代が来るかもしれない。しかしこれを次のステップとして、地域包括ケア病棟でお願いできるのかどうかということは少し疑問のある病態もある。
  自殺企図やホームレス、支援家族がないなど社会的支援を必要とするような人たちの転院の手段については時間がかかる。こういう人たちをどうするかという問題がある。
  大阪緊急連携ネットワークで明らかになった課題をまとめると、慢性期医療機関も出口問題に直面していることと、社会背景が問題になる人もまた、それが退院支援に大きく影響してくるということである。精神疾患、認知症、犯罪歴、多剤耐性菌の感染症なども調整困難の要因となる。
  ご承知かもしれないが、当院では2年前に多剤耐性菌のアウトブレイクが起こった。その時には救命センターへの受け入れを2週間止めなければいけなくなったり、患者さんを外に出せなくなったりと、いろいろ苦労したことがあったが、こういうことは地域連携の中で情報を共有化していかなくては、その後、他の医療機関等に患者を流していくことについての抵抗にもなる。
  救命センターや救急病院の転院先病床を見ると、平成26年度から地域包括ケア病棟が転院先として出てくるという状況が出てきた。また回復ケア病棟への転院によっても、在宅復帰率は若干上がっている。しかし在宅復帰率を上げるためには、転院できない傷病者を退院まで診るという状況が一部残っており、急性期病院としては悩ましいところがある。
  そこで地域包括ケア病棟など地域に密着した病棟が中心になる地域の医療、地域連携だが、こういう一方向だけではなく、お互いにやり取りをするという連携が要素としてあるかと思う。
  長期急性期病床が見る患者は、アメリカで記載されているものを抽出してきたが、だいたい25日以上の入院患者で人工呼吸管理、あるいは透析、呼吸器の集中治療、それから点滴、輸血など複数のメディケーションが必要な傷の管理、こういったものが長期化する要素としてある。「LTAC」と称する病院の平均的な入院患者は30日くらいだと言われている。
  長期急性期機能は、やはり救急重症患者の受け入れ、救急医療機関からの受け入れ、重症急性病態の長期管理、それから在宅復帰、慢性期への橋渡しがあるが、これは地域包括ケア病棟が担うことになるかもしれない。
  地域包括ケア病棟が担うべき災害時の機能はあまり考えられていない。大災害のときに傷病者を担う病院機能だが、ここは災害拠点病院で巨大な地震に備えたものである。南海トラフの被害想定について調べたことがある。内閣府の被害想定に基づいて、津波や最大震度などの情報と病院機能、医療機関データによってデータベースを作ってみた。
  想定された被害の全国での分布を表示したものだが、負傷者数が65万、死者数が44万と推定されている。これがどのような県別に分布しているかという図を示したが、それに加えて地震や津波により機能維持が困難なる病院の病床数は31都府県で26万床と推定される。
  機能不全に陥るであろうこういった病院の機能を代替するためには、災害拠点病院だけでは駄目なので、やはり地域を担う地域包括ケア病棟をはじめとした医療機関にも一定の役割が必要になってくると思う。急性期病床の削減が、災害医療の脆弱性につながらない対策が必要であると思われる。広域災害の被災地域で地域包括ケア病棟の果たす役割は大きくなると想定される。
  以上でまとめさせていただくと、急性期医療機関にとって在宅復帰を想定した医療連携には、地域包括ケア病棟が重要なカウンターパートになると思われる。しかし、在宅高齢者の急変時対応や生活支援、病院機能分化への社会の理解、災害へ対応できる機能、それから感染対策など、医療機関の連携の課題は残されている。

〇上西紀夫座長:
  救急医療、特に高齢者救急の実際の経験の中から、今後のLTACのあり方についてお話いただいた。特に救命センター、あるいは災害拠点病院としてのそうした状況の中で、どんな役割があるかについてお話いただいた。
  たしかに私も高齢者、老夫婦2人で住んでいる。少し話は違うが、先日も阪神タイガースの中村勝広GMは脳出血だったそうだ。そのように孤独死などが起こりうる時代だと思う。
  そういう中で、やはり救命救急センターに運ばれた方が、今後どういうふうに流れていくか。うちの病院でもかなりいろんな方が来ていて、リハビリに至っている人はまだいいが、それ以上に透析などとなると、なかなか引き取ってもらえないという問題がある。
  そうしたところを地域包括ケア病棟なり、あるいは慢性期の病床できちっと連携を取っていかないと、これからの高齢者医療については難しい問題があるということをお話しいただいた。ありがとうございました。



(了)

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